国立天文台先端技術センター 小嶋崇文氏、IEEE Microwave Theory and Techniques Society Japan Young Engineer Awardを受賞

国立天文台先端技術センターでアルマ望遠鏡の新しい受信機を開発している小嶋崇文氏が、2018年11月に開催されたマイクロウェーブ展2018にて、IEEE Microwave Theory and Techniques Society Japan Young Engineer Awardを受賞しました。この賞は、マイクロ波の理論および技術の分野に貢献する論文を発表した若手研究者に与えられるものです

小嶋崇文氏

IEEE Microwave Theory and Techniques Society Japan Young Engineer Award を受賞した小嶋崇文氏。国立天文台先端技術センターにて。
Credit: 国立天文台

対象論文
・Takafumi Kojima, Alvaro Gonzalez, Shin’ichiro Asayama, and Yoshinori Uzawa (NAOJ)
”Design and Development of a Hybrid-Coupled Waveguide Multiplexer for a Multiband Receiver”, IEEE Transactions on Terahertz Science and Technology, Vol. 7, No. 1, 2017
・Takafumi Kojima, Matthias Kroug, Kazunori Uemizu, Yasutaka Niizeki, Hiroaki Takahashi, and Yoshinori Uzawa “Performance and Characterization of a Wide IF SIS-Mixer-Preamplifier Module Employing High-Jc SIS Junctions”, IEEE Transactions on Terahertz Science and Technology, Vol. 7, No. 6, 2017

小嶋氏らは、将来的にアルマ望遠鏡に搭載することを目指した高性能電波受信機の開発を行っています。受信機の心臓部には超伝導素子(SIS素子)が使われていますが、一般にこの種の受信機では一度に観測できる電波の周波数帯域が限られます。現在のアルマ望遠鏡では、その帯域幅は4~8GHzほどです。一方、小嶋氏らのチームが新しく開発した『高臨界電流密度SISミキサ』では、およそ20GHzの幅にわたって高い感度で電波を受信できることが実証されました。これにより、例えば星が生まれるガス雲に含まれるさまざまな分子や超遠方に存在する銀河からの電波を高い効率で検出することができるようになると期待されます。また小嶋氏らは、導波管型周波数マルチプレクサという複雑な回路を用いて、さらに幅広い100GHz以上の周波数帯域の電波を一度に観測できる新しい受信機システムの設計と開発も進めています。これらが実用化されれば、これまでの電波望遠鏡観測の常識を打ち破るような多彩な観測が可能になります。

今回の受賞にあたって小嶋氏は「この度栄誉ある賞を賜り感銘を受けております。また、本研究にご支援・ご指導いただきましたすべての皆様に感謝申し上げます。電波天文用の受信機広帯域化を目指した一つの研究成果がマイクロ波工学を専門とするソサイエティにご評価頂いたことに大きな意義を感じております。今後も研究開発を継続して実用化に取り組むことで、電波天文学ならびに関連分野の発展に貢献をすべく精進してまいります。」とコメントしています。

本研究の一部は、情報通信研究機構、電気通信大学との共同研究によって実施しました。

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