アルマ望遠鏡が観測した大質量星形成における磁力と重力の相互作用

自然界に存在する4つの基本的な力の1つである「磁場」は、水力発電所で電気を作ったり、医学で病気を診断したりと、日常生活の中でたいへん重要な役割を果たしています。現代の技術が発達する以前は、地球磁場が旅人にとって羅針盤の役割を果たしていました。また地球磁場は、太陽の磁場で加速された荷電粒子が地上に降り注ぐのを防ぐシールドの役割も担っています。このシールドを取り除けば、地球上の生命は消滅してしまうでしょう。では、太陽系の外では磁場はどんな役割を果たしているのでしょうか。

太陽は、約46億年前に塵(ちり)とガスの雲の中で誕生しましたが、その誕生に磁場が深く関係していたかもしれません。実際、磁場が星の形成過程にどのような影響を与えているのか、科学者たちの議論が続いています。特に、最も質量の大きい星の形成過程は、まだ謎だらけです。科学者たちは、長年、磁場が大質量星の形成過程に不可欠であると考えていました。しかし、この理論を証明するにも反証するにも、限られた数の観測的証拠しかありませんでした。

国立天文台のパトリシオ・サヌエーサ氏率いる国際研究チームは、アルマ望遠鏡を使ってこの長年の問題に取り組みました。研究チームは、地球から7600光年の距離にあるIRAS 18089-1732と呼ばれる大質量星形成領域を観測し、渦巻き状の磁場構造を発見しました。しかし予想に反して、この磁場は、別の基本的な力である「重力」に圧倒されていたのです。

「このような極端な環境では、重力がガスの形態を決めエネルギー収支を支配することができるのです」とサヌエーサ氏はコメントしています。さらに研究チームは、原始星が重力によってガスを引き付けることで、原始星周囲の磁力線がねじれていることを発見しました。

別の星形成環境を観測した先行研究では、磁場が重要な役割を担っているという証拠を発見したことがありました。そのため、磁場の寄与が小さいという今回のアルマ望遠鏡による観測結果は研究チームにとって驚きでした。今回のアルマ望遠鏡の発見は、大質量星形成過程の多様性を明らかにしたものといえます。さまざまな力の相互作用を私たちが地球上で経験しているように、大質量星は、磁場が強い環境でも弱い環境でもさまざまな力の相互作用を感じながら形成されうるものであるということが、やや予想外ながら明らかになったのです。

 

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アルマ望遠鏡の観測をもとに作成した、大質量星形成領域IRAS 18089-1732の磁場の広がり。色は電波の強度を表しており、アルマ望遠鏡が偏光観測によって明らかにした磁力線の形状を線で描いています。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Sanhueza et al.


 

この研究成果は、Patricio Sanhueza et al. “Gravity-driven Magnetic Field at 1000 au Scales in High-mass Star Formation”として、米国の天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」に2021年6月30日付で掲載されました。

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