太陽に似た若い星のまわりに、アミノ酸の材料を発見

アルマ望遠鏡が、非常に若い段階にある星のまわりで、生命の材料であるイソシアン酸メチルを発見しました。将来太陽に似た星になるであろう若い星のまわりでこの分子が見つかったのは、これが初めてです。この発見は、地球の生命がどのように発生したのかを探る手がかりになるかもしれません。

アルマ望遠鏡による原始多重星系IRAS 16293-2422の観測から、生命の起源に密接に関連すると考えられる有機分子イソシアン酸メチル(CH3NCO) [1] 天文化学の分野では、少なくとも一つの炭素原子を含み、全体で6個以上の原子からなる分子を複雑な有機分子と定義しています。イソシアン酸メチルは、炭素、水素、窒素、酸素原子を含みます。この分子は、探査ロゼッタによるチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の観測でも検出されています。この分子は非常に毒性が高く、1984年にはインドの化学工場から漏れだしたイソシアン酸メチルが大きな被害をもたらしました。が放つ電波が発見されました。この研究はふたつの研究チームが独立に行ったもので、ひとつのチームはスペイン・アストロバイオロジーセンターのラファエル・マーティン=ドメネク氏、もうひとつのチームはオランダ・ライデン天文台のニルス・リグテリンク氏とユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのオードリー・クーテンス氏を中心とするものです。

「この星は、まるで有機分子の宝箱です。以前同じ星のまわりで糖類分子が発見されましたが、今度はイソシアン酸メチルを見つけました。これらの有機分子は、アミノ酸やそれが連結したペプチドの合成に使われる分子です。つまり、私たちが知っている生命の基本構成要素といえます。」と、リグテリンク氏とクーテンス氏はコメントしています [2] IRAS 16293-2422は以前にもアルマ望遠鏡で観測されており、もっとも単純な糖類であるグリコールアルデヒドが検出されています。(参考:2012年8月29日プレスリリース>「アルマ望遠鏡、赤ちゃん星のまわりに生命の構成要素を発見」

アルマ望遠鏡の高い感度により、イソシアン酸メチルが発する異なる周波数の電波を捉えることができました [3] マーティン=ドミニク氏らの研究チームはアルマ望遠鏡バンド3(波長2.6~3.6mm), バンド4(1.8~2.4mm)、バンド6(1.1~1.4mm)の広い波長帯域のデータをアーカイブから取得したり新たに観測したりして解析しました。一方ニルス・リグテリンク氏らのチームは、ALMA Protostellar Interferometric Line Survey (PILS)プロジェクトで得られたデータを解析しました。このプロジェクトでは、アルマ望遠鏡バンド7(波長0.8~1.1mm)の全波長帯にわたってIRAS 16293-2422を観測し、化学組成を明らかにしようとしています。。IRAS 16293-2422のまわりには、温かく密度の高いガスが繭のように取り巻いています。ふたつの研究チームは、イソシアン酸メチルが発する電波をそれぞれとらえただけでなく [4] 研究チームは、原始星からの電波を分光することによってその化学組成を調べました。検出されたイソシアン酸メチルの存在比(水素分子やほかの物質との数の比)は、大質量星形成領域オリオンKLやいて座B2での存在比と同程度でした。、その化学反応をコンピュータモデルを用いて解析し、その起源についても迫ろうとしています [5] マーティン=ドメネク氏らのチームは、ガスと塵粒子のある環境下でイソシアン酸メチルが形成される様子を化学モデルを使って調べました。その結果、観測で検出された量のイソシアン酸メチルは、塵の表面での化学反応と気体中での化学反応が順に進むことで作られることがわかりました。リグテリンク氏らのチームはさらに、ライデン大学の超低温真空実験施設を用いて、-258℃という極低温環境でもイソシアン酸メチルが作られうることを示しました。

IRAS 16293-2422は、へびつかい座の方向およそ400光年の距離にあり、複数の赤ちゃん星(原始星)から構成されています。アルマ望遠鏡では、そのそれぞれの原始星のまわりでイソシアン酸メチルが発見されました。

太陽に似た若い星のまわりに、アミノ酸の材料を発見ALMA detects methyl isocyanate around young Sun-like stars

へびつかい座の暗黒星雲の可視光画像。イソシアン酸メチルが発見された原始多重星系IRAS 16293-2422はこの暗黒星雲のなかにあり、その位置とイソシアン酸メチルの分子構造イラストを画像に重ねてあります。
Credit: ESO/Digitized Sky Survey 2/L. Calçada

太陽系の惑星は、太陽が形成された時に残された物質が集まってできたものです。太陽に似た星に成長するであろう原始星を調べることは、太陽系が約46億年前にどのような姿であったのか、どのような化学組成であったのかを知ることにつながります。

マーティン=ドメネク氏と共同研究者のヴィクトル・リビッラ氏は、次のようにコメントしています。「この星が、太陽の生まれた直後によく似ていること、地球に似た惑星が誕生する可能性があることに特に興奮しています。生命の材料になるような物質を見つけたことで、私たちが住む惑星にどのようにして生命が生まれたのかを知るためのパズルのピースを、もう一つ手に入れたことになります。」

リグテリンク氏は、「分子を検出しただけでなく、どのようにしてこの分子が作られたのかも知りたいのです。実験室で実験してみると、宇宙空間を模した極低温環境ではイソシアン酸メチルが氷の粒子の表面で生成されることを確かめることができます。これは、イソシアン酸メチルが、そして生命の材料が、太陽に似たきわめて若い星のまわりで作られることを示しているのです。」

この観測成果は、Martín-Doménech et al. “First Detection of Methyl Isocyanate (CH3NCO) in a solar-type Protostar” と、Ligterink et al. “The ALMA-PILS survey: Detection of CH3NCO toward the low-mass protostar IRAS 16293-2422 and laboratory constraints on its formation”として、イギリスの「英国王立天文学会誌」に掲載されます。

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1. 天文化学の分野では、少なくとも一つの炭素原子を含み、全体で6個以上の原子からなる分子を複雑な有機分子と定義しています。イソシアン酸メチルは、炭素、水素、窒素、酸素原子を含みます。この分子は、探査ロゼッタによるチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の観測でも検出されています。この分子は非常に毒性が高く、1984年にはインドの化学工場から漏れだしたイソシアン酸メチルが大きな被害をもたらしました。
2. IRAS 16293-2422は以前にもアルマ望遠鏡で観測されており、もっとも単純な糖類であるグリコールアルデヒドが検出されています。(参考:2012年8月29日プレスリリース>「アルマ望遠鏡、赤ちゃん星のまわりに生命の構成要素を発見」
3. マーティン=ドミニク氏らの研究チームはアルマ望遠鏡バンド3(波長2.6~3.6mm), バンド4(1.8~2.4mm)、バンド6(1.1~1.4mm)の広い波長帯域のデータをアーカイブから取得したり新たに観測したりして解析しました。一方ニルス・リグテリンク氏らのチームは、ALMA Protostellar Interferometric Line Survey (PILS)プロジェクトで得られたデータを解析しました。このプロジェクトでは、アルマ望遠鏡バンド7(波長0.8~1.1mm)の全波長帯にわたってIRAS 16293-2422を観測し、化学組成を明らかにしようとしています。
4. 研究チームは、原始星からの電波を分光することによってその化学組成を調べました。検出されたイソシアン酸メチルの存在比(水素分子やほかの物質との数の比)は、大質量星形成領域オリオンKLやいて座B2での存在比と同程度でした。
5. マーティン=ドメネク氏らのチームは、ガスと塵粒子のある環境下でイソシアン酸メチルが形成される様子を化学モデルを使って調べました。その結果、観測で検出された量のイソシアン酸メチルは、塵の表面での化学反応と気体中での化学反応が順に進むことで作られることがわかりました。リグテリンク氏らのチームはさらに、ライデン大学の超低温真空実験施設を用いて、-258℃という極低温環境でもイソシアン酸メチルが作られうることを示しました。

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