2016年10月から開始されるアルマ望遠鏡科学観測サイクル4に向けた観測提案の審査が終了し、研究者に結果が通知されました。多くの国から記録的な数の観測提案が提出され、要求観測時間の合計はサイクル3からさらに50%増加しました。これは、アルマ望遠鏡が世界中の天文学者コミュニティに注目されている証です。
観測提案の提出は2016年4月に締め切られ、30か国以上から提出された1571件の提案が世界中の研究者によって審査されました。その結果、400人を超える研究者に観測時間が与えられることになりました。
今回サイクル4に提案された要求時間の合計は18,630時間に上り、これは24時間365日観測を続けたとしても2年かかってしまう計算になります。このうち12mアレイへの提案が12,285時間、アタカマコンパクトアレイ(モリタアレイ)への提案が6345時間でした。一方、合同アルマ観測所が今回提供するのはそれぞれ3000時間と1800時間です。「アルマ望遠鏡がこれからも素晴らしい観測成果を出し続けるために、提案を科学的な観点から審査し順位付けする必要がありました」と、合同アルマ観測所長のピエール・コックス氏はコメントしています。
145名の研究者からなる観測提案審査委員会が、観測提案の科学的な重要性と成功の可能性をひとつひとつ大変な労力を費やして審査した他、アルマ望遠鏡プロジェクトの内部スタッフが各提案の技術的な実現可能性を吟味しました。審査委員は互いの審査の基準をすり合わせ、また客観的な一つのランキングを作るために、2016年6月にオーストリアのウィーンで1週間にわたって会合を行いました。「審査委員たちは、世界中のトップ研究機関から集められた専門家たちでした。そのおかげで、公正かつ理性的な審査を行うことができました」と、合同アルマ観測所で観測提案審査を取り仕切る天文学者ゴティエ・マティス氏は語っています。
最も多くの提案が出され、また最も多く採択されたカテゴリーは「星間物質・星形成・星間化学」で、全体の1/4を占めました。「観測的宇宙論と遠方宇宙」「銀河と銀河核」「星周円盤・太陽系外惑星・太陽系天体」がそれぞれ約1/5ずつ、「恒星進化・太陽」が残りの1割ほどとなっています。
サイクル4は2016年10月から2017年9月に観測が実行され、最低53台のアンテナが使用されます。このサイクルでは、アンテナの最大展開範囲は12.6km、最高解像度は0.029秒角となります。
画像1. アルマ望遠鏡科学観測サイクル4で新たに可能になる観測機能。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)
画像2. 観測提案が提出された地点。いろいろなところから提案が集まっていることがわかります。
Credit: ALMA (NRAO/NAOJ/ESO)
画像3. オーストリア・ウィーンに集まった観測提案審査委員会のメンバー。
Credit: G. Mathys – ALMA (ESO/NOAJ/NRAO)
画像4.(下) アルマ望遠鏡科学観測サイクル4で採択された観測提案の分野別統計。
Credits: Composition: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO) | Background images: The Sun – ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), CMB – NASA / WMAP Science Team, Astrochemistry – ESO/L. Calçada & NASA/JPL-Caltech/WISE Team, Centaurus A – ALMA (ESO/NAOJ/NRAO); Y. Beletsky (LCO)/ESO, HL Tau – ALMA (ESO/NAOJ/NRAO).