ACAアンテナとACA相関器を使った初めての偏波試験観測

チリ時間の4月29日、日本が製造を担当するACA(アタカマ・コンパクト・アレイ)7メートルアンテナ5台とACA相関器を使った初めての偏波観測試験が行われました。
偏波とは、電波が特定の方向に振動している状態をいいます。電波は波の性質を持ちますが、その振動の方向に偏りがある場合があります。身近なところでは、通信に使われている電波にも偏波が使われています。天体観測では、偏波によって天体の磁場構造などを調べることができます。星や銀河が生まれるときなど、磁場は宇宙の様々な場所で重要な役割を果たしていると考えられているため、偏波を使って磁場を調べることはとても重要です。アルマ望遠鏡では天体からやってくる電波の強度と周波数情報のほかに、この偏波も高精度で観測することを目指しています。

今回の試験観測では、クエーサー1924-292(地球からの距離およそ39億光年)が観測されました。この天体の中心には大質量ブラックホールがあり、そこから光速に近い速度で噴き出すガスの流れ(ジェット)が放つ強い電波を放っています。今回の観測では、1%を十分に切る非常に高い精度での偏波検出能力が確認され、アルマ望遠鏡を用いた宇宙磁場の高精度な研究に向けた大きな一歩となりました。

下は、偏波観測試験の結果が表示されたディスプレイと記念写真を撮る(右から)永井洋研究員、Neil Phillips 氏(合同ALMA観測所)、浅山信一郎助教、直井隆浩専門研究職員、中西康一郎助教です。

下の図は、今回観測したクエーサー1924-292です。白い線の方向に偏波があることが、試験観測によって確認されました。

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