国立天文台・総合研究大学院大学(総研大)天文科学専攻では、毎年8月に、理工学系学部生2年または3年に在学する学生さんに向けてサマースチューデントプログラムを開催しています。総研大併任教員の指導のもとで短期間ではありますが研究を体験してもらう制度であり、将来天文学に進みたいという希望を持つ学生さんを育成することを目的としています。すでに学生の受け入れを行っている国立天文台三鷹地区や国内各観測所、ハワイ観測所すばる望遠鏡(アメリカ、ハワイ州ヒロ)に加え、今年からは合同アルマ観測所(チリ共和国、サンティアゴ)でも学生の受け入れを始めました。
今年は、本プログラムに応募してくれた京都産業大学の学部3年生の2人が8月中旬より約1ヶ月間、高橋智子助教と一緒にアルマ望遠鏡データを用いた原始星の形成・進化というテーマで研究を行いました。観測データの解析法を学ぶことに加え、星形成や電波干渉計の仕組みについても講義、論文読み、議論を通して学び、最終的には学生がどの天体を対象にどのようにデータ解析を進めたいかを主体的に決めることができました。サマースチューデントの成果報告会ではそれぞれが、(i) 原始星に付随するガスの降着・回転運動と星周円盤形成についての考察、また (ii) 複数原始星に付随する双極分子流(質量放出現象)の同定と進化段階の分類に着目した研究発表を行いました。
また、日々の研究活動に加え、合同アルマ観測所や併設するヨーロッパ南天天文台(ESO)と共同で行われている論文・サイエンスセミナー等にも参加し、日本人以外の研究者とも積極的に議論を行いました。滞在の最後には、学生本人たちの希望により、合同アルマ観測所にて英語の研究発表も実現させました。まさにインターナショナルな環境で充実した研究活動を行ってもらえたのではと思っています。
- 写真1. 合同アルマ観測所での研究者との議論の様子