ALMA(アルマ)計画の進捗について
--組み上げ調整・試験においてアンテナの性能を確認--

2008年3月18日 国立天文台

日米欧の国際プロジェクトとして南米チリに建設中の電波望遠鏡ALMA(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)において、日本が製作したパラボラ・アンテナのうちの1台を用いて、月の電波写真を撮影しました。これは建設途中のALMAにおいて、チリ現地における天体からの電波の初の受信です。このことにより、ALMA計画は、アンテナの性能を確認する重要なマイルストーンを順調に達成したことになります。


ミリ波サブミリ波における究極の電波望遠鏡の実現を目指して、アンデス山脈チリ北部のアタカマ砂漠にあるチャナントール高原(図1)に、日米欧が協力して国際的な天文施設であるアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計 (ALMA) を建設しています(図2)。昨年の後半には、日本が担当するACAアンテナ16台のうち3台(直径12mのアンテナ)が現地での組み立てを完了しました(図3)。

このたび、日本が製造したアンテナの1台に、日本が担当する受信機を搭載し、観測波長2ミリメートル(周波数140ギガヘルツ)で初めて月の電波写真の撮影を行いました。この結果を(図4)に示します。下弦の月が見事に捕らえられているばかりでなく、光学画像では影になって見えない側(月の右半分)も、電波ではうっすら見えていることがわかります。ちなみに、当該撮影は、日米欧を通じてチリ現地においては初めてのこととなりました。ALMAの建設は日本では2004年度より8年計画として進められてきましたが、計画通り、開始から4年が経過するこの時期に、日本が担当するACAアンテナを用いて、日米欧で初めて電波画像が取得できました。

ALMAのすべての装置が完成すると、すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡の10倍に相当する高い解像力を発揮します。2012年から予定される本格観測により、宇宙の謎を探るのに適したミリ波サブミリ波の電波の特性をいかして、宇宙初期における銀河の誕生や惑星系の誕生、そして、宇宙の物質進化に関しての重要な知見が得られると期待されます。今回の撮影により、アンテナの性能を確認する重要なマイルストーンを順調に達成したことになります。

図1. ALMAの建設場所

図1. ALMAの建設場所。
最終的には標高5000mのチャナントール高原に設置される。現在は、サンペドロ・デ・アタカマ市の近郊にあるALMA山麓施設(標高2900m)の場所にパラボラ・アンテナが設置され、組み上げ調整・試験が行われている。

図2. ALMA完成イメージ図

図2. ALMA完成イメージ図 Credit:ALMA(ESO/NAOJ/NRAO)ALMA
計画の日本側の推進母体である国立天文台は、ALMAの装置のうち、アタカマ・コンパクト・アレイ (ACA) システム(直径12mのアンテナ4台と直径7m のアンテナ12台で構成される高精度パラボラ・アンテナ群およびそのための相関器)、ミリ波サブミリ波受信機の製作などを担当している。ACAシステムの高精度パラボラ・アンテナ群を赤の円で示す。ACAシステムは、ALMAで取得される電波写真のクォリティを飛躍的に高める。

図3

図3. 日本が製造を担当するパラボラ・アンテナのうち、最初の3台が現地での組み立てを終えてその美しい姿を現した。

図4. 最初の月の撮影

図4. 最初の月の撮影。
左が対比のためデジタル・カメラで撮影した光の画像。右が今回パラボラ・アンテナで取得した電波の画像。電波画像は、月面の温度分布を的確にとらえており、パラボラ・アンテナが目標性能を満たしていることが確認された。光での月の画像では太陽からの光が月面で反射したものを見ているのに対して、電波では月面の深さ数十センチメートル付近の岩石の熱による放射がとらえられる。電波画像では、月の地下の温度が場所によって違うようすが、きれいに描き出せているのがわかる。このように、電波画像では、目で見える光でとらえる情報とは異なった情報を取得することができる。

ALMA_rogo

www.alma.info

The Atacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA), an international astronomy facility, is a partnership among Europe, Japan and North America, in cooperation with the Republic of Chile. ALMA is funded in Europe by the European Organisation for Astronomical Research in the Southern Hemisphere (ESO), in Japan by the National Institutes of Natural Sciences (NINS) in cooperation with the Academia Sinica in Taiwan and in North America by the U.S. National Science Foundation (NSF) in cooperation with the National Research Council of Canada (NRC). ALMA construction and operations are led on behalf of Europe by ESO, on behalf of Japan by the National Astronomical Observatory of Japan (NAOJ) and on behalf of North America by the National Radio Astronomy Observatory (NRAO), which is managed by Associated Universities, Inc. (AUI).

NEW ARTICLES