チリ・サンティアゴでふたつの七夕講演会を実施

南半球にあるチリでは7月は真冬ですが、日本人コミュニティにとって七夕はやはり忘れることのできないイベントです。日本天文学会が進める「全国同時七夕講演会」に合わせて、サンティアゴでもふたつの講演会を実施しました。

サンチャゴ日本人学校で毎年恒例の七夕特別授業は、7月5日に開催されました。サンティアゴは1週間ほど雨が続き、当日も午後になってから雨が降り出し星空を楽しむにはあいにくの空模様でしたが、小学1年生から中学3年生までの生徒の皆さんはとても元気な様子でした。今年は国立天文台/合同アルマ観測所の朝木義晴准教授が「宇宙を見る目:望遠鏡」というタイトルで授業を行い、光だけにとどまらず電波からガンマ線までさまざまな波長で観測できる宇宙の姿や、人工衛星望遠鏡によって宇宙から宇宙を観測することなど、最新の宇宙観測を紹介しました。アルマ望遠鏡を使ってミリ波で捉える恒星誕生の現場や銀河中心に埋もれた巨大ブラックホールの話に、生徒の皆さんは非常に高い関心を持ってくれたようでした。太陽系の話題の時に講師から「この惑星は?」と問いかけると大きな声で惑星の名前を答えてくれたり、中学生の生徒の方々からは宇宙研究の最前線に迫る質問をいただいたりと、講師がとても楽しい思える授業でした。
 

サンチャゴ日本人学校で講演する朝木准教授

サンチャゴ日本人学校で講演する朝木准教授
Credit: 国立天文台

 

7月7日には、日智商工会議所の婦人会(チリの国花にちなんで「コピウエ会」と呼ばれています)の講演会と天体観察会を実施しました。コピウエ会ではここ数年、国立天文台の協力のもとで会員向けの天文講演会と天体観察会を実施しており、2016年11月にはサンティアゴ市内の日智文化会館で、2017年5月にはチリ観測所長宿舎での実施でした。国立天文台サンティアゴ事務所での「オトナのための七夕講演会」と題した講演会では、阪本成一 国立天文台チリ観測所長から平石好伸大使ご夫妻をはじめ45名の参加者に向けて、新暦七夕と伝統的七夕の違いや、アタカマの山々の恋物語と七夕伝説の類似性、天の川を背景にシルエットで見えるインカの暗黒星座、ハーシェルの宇宙観、そして天の川銀河に関する最新の理解についての解説がありました。終了後には所長宿舎の屋上テラスに会場を移して、雲の切れ間に木星の観察などをしながら、所長の手料理や会員が持ち寄った料理を肴に歓談しました。参加者の中には所長宿舎での月例天体観察会の常連も多く、チリの日本人社会にも天体観察という文化が根付きつつあるようです。
 

アタカマの山々にまつわる物語を紹介する阪本所長

アタカマの山々にまつわる物語を紹介する阪本所長。
Credit: 国立天文台


 

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