2006. 11. 30

2006年秋号 総合科学技術会議による評価、開発状況等

国立天文台のALMA(アルマ)計画に関心をお持ちの皆さま
 国立天文台が進めているALMA計画の近況報告と、これから行われる一般
向け講演会等についての案内をお送りします。
※最新情報についてはALMAのホームページ
 http://www.nro.nao.ac.jp/alma/ をご覧下さい。
【近況報告】
 文部科学省からALMA計画の推進に関して来年度分として39億7900万円が
要求されました。これに対して今年も例年と同様に総合科学技術会議によ
る評価が行われ、ALMA計画の評価は例年通りS-A-B-CのうちのAランク(重
要な施策等であり、着実に実施すべきもの)として位置づけられています。
https://alma-telescope.jp/assets/uploads/sites/www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu60/siryo2-2-1.pdf
 チリ現地の状況でいえば、標高5050mでの山頂建物の建設工事が引き続
いて行われており、外装工事はほぼ完成し、内装工事が重点的に進められ、
相関器用の空調設備の取り付けなどが行われています。この建物は完成の
暁には世界でも有数の標高にある近代的な鉄骨建物になる予定で、その中
に収められる相関器も世界有数の演算速度を持つことになります。
 一方、標高2900mの山麓施設の建設現場では、山麓建物の基礎工事やア
ンテナ組立エリアの整備などが進められています。山麓建物の建設現場に
は定点観測ウェブカメラが設置されており、現地の日中にはリアルタイム
画像をwww.alma.clから見ることができます。また、現地の夜には星座カ
メラ”i-CAN”を使って山麓施設からの夜空を楽しむこともできます。月が
出ていない時間帯には黄道光をとらえることもできました。
 日本・北米・欧州の各地では、それぞれが担当する機器の開発が引き続
き精力的に進められており、計算機ソフトウェアに関しては人的リソース
を持ち寄って合同で開発が進められています。
 例えば日本国内では、日本が担当するアタカマコンパクトアレイ(ACA)
用の4台の12mアンテナのうちの3台の組立に加え、来年度早々に予定され
ている7mアンテナの契約の準備が進められています。
 受信機に関しては、バンド4(150GHz帯)とバンド8(500GHz帯)の受信機
カートリッジについて、プレ量産の準備をさらに進めました。また、ALMA
の最高周波数帯であるバンド10(900GHz帯)に関しては、新しい実験室に測
定系を整備するとともに、要素技術の開発を進めています。特に、性能の
鍵を握るミキサ部分については、この高い周波数帯で急激に性能を劣化さ
せるニオブに代えて、窒化ニオブや窒化ニオブチタンをベースとした超伝
導検出素子を開発するとともに、信号入力方式として導波管方式と準光学
方式を比較しながら、性能向上を試みています。
 また、ACA相関器は、詳細設計に基づく試作試験が国内のメーカで行わ
れています。
 加えて、観測運用の開始に備えて運用計画についての審議がALMA評議会
やALMA科学諮問委員会などで精力的に進められています。ACAの運用の方
法についての検討や、国際天文学連合の総会や日本天文学会の年会にあわ
せたユーザとの意見交換会も行いました。
 台湾との協力も具体化してきています。10月26日には第1回の東アジア
ALMA科学諮問委員会を日本と台湾から委員とオブザーバを招いて国立天文
台三鷹で開催し、プログラム審査委員会や東アジアALMA地域センター(仮
称)のあり方について議論するとともに、東アジア地域でのALMAサイエン
スワーキンググループの活動の重要性について再確認しました。中国や
韓国からのオブザーバ参加についても歓迎する方針です。
 研究会関連では、11月13日から17日にかけてはスペインのマドリッドで
研究会”Science with ALMA: A New Era for Astrophysics”が開かれ、会
場の定員となる300名が参加しました。初日の朝から会場はほぼ満席で、
ALMAに対する世界中の研究者の期待の高さが伺われました。
 広報関連では、各地でALMA公開講演会を月1回程度のペースで実施して
います。講師や講演内容は毎回異なりますので、ぜひともお越しください。
また、ALMAの12mアンテナとアンテナ移動台車のペーパークラフトが完成
しました。型紙はキッズページからダウンロードできるようになっていま
す。また、日米欧が調達を進めるアンテナの形状や配列など最新のデータ
を反映させたコンピュータグラフィックスの静止画と動画がヨーロッパ南
天天文台の努力により完成し、ホームページ上で公開されています。
 そのほか、2005年4月からすでに120号を数えた写真ニュースにもいろい
ろ載せてありますのでどうぞご覧ください。
【一般向け講演会・施設公開・展示等】
◎第13回ALMA公開講演会「アンデスの巨大電波望遠鏡でさぐる宇宙」
 日時:2007年 1月 6日(土) 13:30-16:30
 場所:静岡市民文化会館
 講師:河野孝太郎 (東京大)、大西利和 (名古屋大)
◎第14回ALMA公開講演会「アンデスの巨大電波望遠鏡でさぐる宇宙」
 日時:2007年 1月27日(土) 13:30-16:30
 場所:熊本県立劇場
 講師:山本智(東京大)、長谷川哲夫(国立天文台)
◎日本チリー協会講演会「アタカマALMA天文台計画」
 日時:2007年 1月31日(水) 18:30-21:00
 場所:日比谷セントラルビル 川崎汽船23階会議室
 講師:阪本成一(国立天文台)
◎第15回ALMA公開講演会「アンデスの巨大電波望遠鏡でさぐる宇宙」
 日時:2007年 3月 3日(土) 13:30-16:30
 場所:なら100年会館
 講師:福井康雄(名古屋大)、阪本成一(国立天文台)

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