コペンハーゲン大学の藤本征史さん、アルマ望遠鏡を使った研究で井上研究奨励賞を受賞

コペンハーゲン大学ニールス・ボーア研究所ドーン・フェローの藤本征史さんが、2021年度の井上研究奨励賞を受賞されました。

藤本征史さんは、東京大学大学院理学研究科天文学専攻の大学院生として、東京大学宇宙線研究所の大内正己教授(現在は国立天文台科学研究部教授を併任)のもとで研究を行い、博士論文「Demographics of the Cold Universe with ALMA: From Interstellar and Circumgalactic Media to Cosmic Structures(日本語題目:ALMAで探る冷たい宇宙:星間及び銀河周辺物質から宇宙の構造までの統計研究)」をまとめられました。学位取得後は東京大学宇宙線研究所、国立天文台アルマプロジェクトの研究員を経て現在はデンマークのコペンハーゲン大学で研究をされています。

 

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コペンハーゲン大学ニールス・ボーア研究所ドーン・フェローの藤本征史さん
Credit: Seiji Fujimoto, All rights reserved.

 

藤本さんの研究は、主に遠方、つまり遠い過去の宇宙を対象にしています。例えば2016年には、アルマ望遠鏡を使って史上最も暗いミリ波天体の検出に成功しました。また、こうした暗い天体から放射される赤外線が、発生源が謎であった「宇宙赤外線背景放射」と呼ばれる宇宙のどの方向からも一様に地球に届く赤外線の起源であることを明らかにしました [1] 。さらに2019年には、アルマ望遠鏡の観測データをくまなく調べることで、宇宙誕生からおよそ10億年が経過した時代の銀河の周囲に半径約3万光年におよぶ巨大な炭素ガス雲があることを世界で初めて発見しました [2] 

さらに藤本さんらは、アルマ望遠鏡を使って、129億年前の宇宙に存在した銀河が回転していたことも明らかにしました [3] 。これらの研究は、アルマ望遠鏡の高い感度と解像度を活かして、遠い過去の宇宙に存在した銀河の性質を明らかにし、銀河と宇宙全体の進化の謎の解明に大きく迫るものです。

今回の受賞を受けて藤本さんは「このような栄誉ある賞をいただけることになり非常に光栄です。これまで直接関わってくださった人はもちろん、アルマのような最新鋭の望遠鏡データに、学生の頃から惜しみなく触れられる環境を整えてくださった先人の方々に感謝いたします (参照:アルマ望遠鏡建設記録映像集)。引き続きアルマを用いた最先端の研究を楽しみながら、私も広く宇宙物理・天文学分野の発展に貢献して、いただいたバトンを繋いでいけるよう、努力していきたいと思います。」とコメントしています。

井上研究奨励賞は、理学、医学、薬学、工学、農学等の分野で過去3年の間に博士の学位を取得した37歳未満の研究者で、優れた博士論文を提出した若手研究者に対し公益財団法人井上科学振興財団が贈る賞です。第38回(2021年度)井上研究奨励賞は40名の若手研究者に贈られました。井上科学振興財団による贈呈式は、2022年2月4日に開催される予定です。


1 詳しくは、2016年3月10日公開のプレスリリース「アルマ望遠鏡、宇宙に満ちる謎の赤外線放射の起源を解明」をご覧ください。
2 詳しくは、2019年12月16日公開のプレスリリース「宇宙初期に予想外の巨大炭素ガス雲を発見 -アルマ望遠鏡がとらえた宇宙最初の環境汚染-」をご覧ください。
3 詳しくは、2021年4月20日公開のプレスリリース「129億年前から銀河は回転していた ―アルマ望遠鏡と天然のレンズが捉えた宇宙初期の小さな銀河とその内側―」をご覧ください。

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