アルマ望遠鏡バンド1受信機の製造にゴーサイン

アルマ望遠鏡で一番低い周波数を担う「バンド1受信機」の製造が、アルマ評議会で認められました。周波数35~52 GHz(波長 6~8.5mm)の電波を受信するバンド1受信機が搭載されれば、アルマ望遠鏡で観測可能な宇宙はさらに広がります。バンド1受信機が搭載されることで、最も遠い宇宙での星形成ガス雲の観測や、若い星の周囲で惑星の材料になるセンチメートルサイズの塵粒子の観測が可能になるのです。

アルマ望遠鏡は、観測する電波の周波数を10の「バンド」に分け、それぞれの周波数帯に特化した受信機を開発してきました。他のバンドと同じく、アルマ望遠鏡全アンテナに搭載される66台と予備の7台を合わせて73台のバンド1受信機が必要であり、これから2019年末までの間に製造されます。アルマ望遠鏡では、現在バンド3、4、6、7、8、9、10の受信機が各アンテナに搭載されており、本格的な科学観測に使われています。バンド5受信機は現在製造中であり、バンド2受信機の開発についての議論も行われています。

今回製造が認められたバンド1受信機は、東アジアからの貢献の一部として、台湾中央研究院天文及天文物理研究所(ASIAA)をはじめとする国際チームによっておよそ10年前から検討と開発が進められてきました。バンド1プロジェクトマネージャであるASIAAのテッド・ホン氏は「アルマ望遠鏡バンド1受信機の技術要求は、その周波数帯の特性から、他のどのバンドの受信機よりも厳しいものでした。開発チームの長期にわたる努力によって要求スペックを満たすことができ、とても誇りに思います。チームには、期限内にすべての受信機の量産を終わらせるべく引き続き努力してくれることを期待しています。」と語っています。

国立天文台はアルマ望遠鏡バンド4、8、10の受信機を開発製造した経験をもとに、バンド1受信機開発のマネジメントと、アンテナで集められた電波を受信機の心臓部に導くための光学系の設計に貢献しています。光学系の設計に携わったアルバロ・ゴンザレス 国立天文台チリ観測所助教は、「光学系の観点から言えば、アルマ望遠鏡の受信機の中でバンド1はもっとも開発が難しかったといえるかもしれません。受信機が入る真空冷凍容器の大きさなどのさまざまな制限を克服しなくてはならず、要求される性能も理論的な限界に近いものです。要求仕様を満たす光学系を設計するには、さまざまな問題を物理学的に完全に理解する必要がありました。」と語っています。

バンド1受信機の開発には、ASIAAの他、国立天文台、チリ大学、カナダ・ヘルツベルグ天体物理学研究所、米国国立電波天文台、台湾国家中山科学研究院が参加しています。またアルマ望遠鏡東アジアコンソーシアムは、日本、台湾、韓国で構成されています。

下の画像は、アルマ望遠鏡バンド1受信機カートリッジです。この受信機は、アンテナに搭載された真空冷凍容器の中でマイナス258℃に冷やされた状態で受信機として機能します。アンテナで集められた電波は受信機上部の円錐状のホーンを通って受信機に入り、低雑音増幅器によって増幅されます。

Tags : 観測成果

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