移動台車(トランスポーター)によるACA12mアンテナの移動

日米欧の国際プロジェクトとして南米チリで電波望遠鏡ALMA(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)の建設が着々と進められています。12月9日には、日本が製作したACA(アタカマ・コンパクト・アレイ)12mアンテナのうちの1台をヨーロッパが製作した専用移動台車(トランスポーター)に掲載し、山麓施設(OSF)内を移動させる実験に成功しました。

アンテナを載せた移動台車は、OSF内のNAOJ(国立天文台)エリアを出発しゲート前の急なカーブを曲がり、最大傾斜10%の坂道を順調に登りました。最大速度は時速5kmでした。
移動台車は幅10m、長さ18mの巨体なのですが、独立ステアリング可能な14組28輪の車輪を駆使して、優雅な小回り性能を見せてくれました。制約の多いアンテナパッド領域でも、この14組の独立駆動のおかげで移動台車を正確な位置に移動し駐車させることができます。

ACA12mアンテナは重さ約100トンの超精密機械です。アンテナの性能に悪影響を与えないように運搬するためには、輸送中のどの段階でも、アンテナに過大な力がかからないようにしなければなりません。
今回の実験では、アンテナと移動台車の結合、アンテナの持ち上げ、平地走行、坂道走行、アンテナの設置のすべての段階を、細心の注意を払って検査し測定しました。

さらに重要なのは安全対策です。約100トンのアンテナを約150トンの移動台車で運ぶ作業となりますので、 機械的にも電気的にも徹底した安全対策が求められます。そのような安全設計に基づいた作業手順を確認することも今回の実験の重要な課題でした。

日本とヨーロッパで別々につくられた2つの精密機械が人間にとっても機械にとっても安全で確実な方法で結合され、順調にアンテナを移動できたことは、国際共同プロジェクトのALMAにとって特別に感慨深いことでした。

移動台車で運ばれる様子は動画で見ることができます。

Tags : 観測成果

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