バンド10受信機開発チーム、文部科学大臣表彰を受賞

アルマ望遠鏡に搭載される10種類の受信機のうち、最も観測周波数が高いバンド10受信機の開発チームが、この度「平成23年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)」を受賞し、5月16日に観山正見 国立天文台台長より表彰状と盾の授与が行われました。

平成23年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)
受賞者:鵜澤佳徳、藤井泰範(国立天文台先端技術センター)、王鎮(情報通信研究機構)
対象となった業績:『窒化ニオブ系超伝導体によるテラヘルツ検出技術の先駆的研究』

アルマ望遠鏡は、周波数31 GHzから950 GHzまでの電波を10の周波数帯(バンド)に分け、それぞれ専用の受信機で受信します。このうち最も周波数が高いのが787 GHz (0.787 THz)から950 GHz (0.95 THz)までのテラヘルツ領域をカバーするバンド10受信機で、国立天文台が開発と製造を担当しています。電波望遠鏡に搭載される受信機には超伝導技術が一般的に使われていますが、バンド10受信機はその高い周波数ゆえにこれまでの受信機に使われていた超伝導体では十分な性能が達成できませんでした。同周波数帯の受信機は欧米の大学・研究機関でも製作されていますが、そのいずれもアルマ望遠鏡の厳しい要求をクリアできる性能ではなかったのです。そこで鵜澤佳徳 国立天文台先端技術センター准教授をリーダーとするバンド10受信機開発チームは、情報通信研究機構と協力して窒化ニオブ系超伝導材料を用いた超高感度ミキサーを開発しました。この超伝導ミキサーを使った受信機はこれまでに開発された同周波数帯の受信機に比べて大幅に性能が向上しており、アルマ望遠鏡への搭載に必要な性能を満たすことができました。世界最高性能のテラヘルツ受信機の開発に成功したのです。今回の文部科学大臣表彰は、これらの成果が評価されたものです。

バンド10受信機チームリーダーの鵜澤佳徳は、今回の表彰を受けて「約20年前から続けてきた窒化ニオブ系超伝導ミキサーの研究が、電波天文学史上最大の国際プロジェクトである巨大電波望遠鏡アルマに応用され、さらに賞までいただけたなど、喜びでいっぱいです。これまでご支援をいただいてきた多くの方々に感謝を申し上げたいと思います。今後もアルマの完成を目指し、また新たな研究開発に挑戦することによって、微力ながら新しい天文学の発展に貢献してきたいと考えています。」と述べています。


写真左から、鵜澤佳徳 准教授、観山正見 国立天文台台長、藤井泰範 技術員です。(写真:佐藤友美)

バンド10受信機チームでは、今後もアルマ望遠鏡への搭載に向けたさらなる技術開発と受信機製作が続けられます。また、電波と赤外線の中間の性質を持つサブミリ波(テラヘルツ波)は医学や化学、生物学において新たな撮像手段として注目が集まっており、今回開発に成功したバンド10受信機の技術はアルマ望遠鏡や天文学のみならず他分野への応用も期待されるものです。

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