国立天文台が開発を担当した3種類のアルマ望遠鏡受信機の開発が、2013年12月をもってすべて完了しました。これらの受信機は順次チリに送られてアンテナに搭載されており、科学観測に向けた準備が続けられています。
アルマ望遠鏡では観測する電波を10の周波数帯(バンド)に分け、各周波数帯専用の受信機が開発されています。そのうち日本はミリ波(バンド4、受信周波数 125~163 GHz)、サブミリ波(バンド8、385~500 GHz)、テラヘルツ波(バンド10、787~950 GHz)の3つの周波数帯の受信機開発を分担しており、国立天文台先端技術センターが中心となって開発・製造を行いました。
各バンドの受信機は66台すべてのアンテナに搭載されるため、各バンド予備を含めた73台の受信機を量産する必要がありました。すでに量産が完了しチリに送られているバンド4・8受信機に続いて、アルマ望遠鏡で最も高い周波数帯であるバンド10受信機73号機の組み立て・調整試験が今月完了しました。これで、日本が担当するすべての受信機の開発が完了したことになります。
【パノラマ】国立天文台先端技術センターで出荷を待つバンド10受信機
開発完了を受けて、東アジア・アルマ・プロジェクトマネージャを務める井口聖 国立天文台教授は
「3種類の受信機の開発と量産は、アルマ望遠鏡に対する日本の貢献として非常に重要な要素で、今回無事に開発が完了したことにほっとしています。アルマ望遠鏡の受信機は、これまでの受信機と比べて圧倒的に高い性能を持っています。これらの受信機を使った観測でどんな素晴らしい成果が出てくるのか、とても楽しみです。」
と語っています。
完成した受信機は厳重に梱包されてチリに送られ、現地での性能確認試験を経てアンテナに搭載されます。チリでも科学観測に向けたさまざまな試験観測が進められており、これまでにバンド4・8では天体電波画像の取得に成功、バンド10では2台のアンテナを結合した干渉計試験の取得に成功しています。
バンド4・8受信機については、来年6月から開始される科学観測サイクル2で世界中の研究者に使用されることになっています。またバンド10についてもさらなる試験観測が行われ、史上最高周波数の電波干渉計としての科学観測の準備が進められます。
写真は、(左から)完成したバンド4、バンド8、バンド10受信機です。(撮影:国立天文台)