アルマ望遠鏡、最も若い原始惑星系円盤を発見

惑星は、生まれたばかりの星の周囲を取り巻くガスや固体微粒子の円盤(原始惑星系円盤)の中で作られると考えられていますが、この円盤がいつどのようにして作られるのかは未だ謎のままです。ドイツ・マックスプランク地球外物理学研究所のナディア・ムリリョ氏と台湾・国立精華大学のライ・シーピン氏らが率いる研究グループは、アルマ望遠鏡を使って、これまで見つかっている中で最も若い原始惑星系円盤を発見しました。この原始惑星系円盤は、これまでの多くの理論研究で示唆されていたよりも若い段階の星のまわりで見つかりました。

太陽系を回る天体は、内側の天体ほど早く、外側の天体ほど遅く太陽を回っています。これをケプラーの法則と呼びます。原始惑星系円盤の中では、ガスや固体微粒子がケプラーの法則に従った回転(ケプラー回転)をしていると考えられており、生まれたばかりの星を取り巻くガスがケプラー回転をしているかどうか、またどの進化段階からケプラー回転をするようになるのかを観測的に確かめることは、惑星の起源を探るうえで非常に重要です。

研究グループはアルマ望遠鏡を用いて、へびつかい座の星形成領域にある生まれたばかりの星、VLA1623を観測しました。VLA1623は生まれたばかりの星が3つ連なった3連星で、星の母体となった大量のガスに覆われています。今回の観測では、3連星のひとつ、VLA1623Aの周囲にあるガスと固体微粒子の円盤がターゲットになりました。アルマ望遠鏡の高い解像度と感度により、研究グループはVLA1623Aの円盤の構造をこれまでにないほど詳細に調べることができました。その結果、この円盤に含まれる物質がケプラー回転をしており、その円盤は海王星軌道のおよそ5倍のところまで広がっていることがわかりました。しかし中心のVLA1623A自体は、太陽の20%の質量しかありませんでした。このことは、VLA1623Aがまだ成長中の、非常に若い段階にあることを示しています。

これまでの理論研究やシミュレーション研究では、これほど若い段階の星のまわりにケプラー回転をする円盤が作られるとは考えられていませんでした。しかし今回VLA1623Aの周囲に巨大なケプラー回転円盤が発見されたことにより、これまでの理論研究では十分に考慮されていなかった何かが円盤の形成に重要なはたらきをしているかもしれない、ということがわかりました。最新の理論研究では、赤ちゃん星の母体となったガスの集合体を貫く磁力線の方向と赤ちゃん星の自転軸がずれている場合、あるいはガスの集合体の内部で激しい乱流が生じている場合などには、巨大な原始惑星系円盤が作られる可能性があるという指摘もあり、今回の観測成果をもとにした検証が今後行われていくことでしょう。


この発見は、Murillo et al. “A Keplerian disk around a Class 0 source: ALMA observations of VLA1623A”として、天文学専門誌アストロノミー・アンド・アストロフィジクス 560号(2013年12月13日発行)に掲載されました。

下の図は、VLA1623Aの想像図です。中心の赤ちゃん星の周囲にケプラー回転する円盤があり、原始星の両極方向には勢いよくガスが噴き出しています。
Credit: N. Murillo et al.

Tags : 観測成果

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