研究者は、ガスの噴出を矢継ぎ早に繰り返す若い原始星をアルマ望遠鏡によって発見しました。星の両極から流れ出す一対の高速のガス流(ジェット)は、原始星の気まぐれな若さを体現しているようにも見えます。
今回発見された原始星は「CARMA-7」と呼ばれており、地球から約1400光年離れたところにあるへび座南星団の中にあります。数十の原始星からなるこの星団は、米・カリフォルニアの電波望遠鏡CARMAによって最初に発見されました。
「この若い原始星は、めざましい成長段階と比較的穏やかな段階を繰り返しているようです。一般的には、この段階の星は、よりスムーズに安定して成長します」と、アデレ・プランケット氏(米・イエール大学、米国国立科学財団大学院学生リサーチフェロー、現職は欧州南天天文台研究員)は語ります。「断続的に進む星の成長は、数多くの原始星が密集した領域での混沌とした相互作用を探る重要な手がかりとなります。」
すべての星形成は、塵とガスの濃い雲の中で起きます。物質が集まるにつれて星が進化を始め、周囲の物質は平らな回転する円盤を形作り、円盤に含まれる物質は星の表面へと落ち込んでいきます。円盤の中で物質が回転するエネルギーと星の磁場のエネルギーが一緒になって一部のガスを吹き上げ、アルマのような電波望遠鏡で観測できる一対のジェットが作られます。
へび座南領域にある原始星の最近の観測によって、非常にはっきりとしたジェットが発見され、研究者を驚かせました。これが今回観測されたCARMA-7です。CARMA-7からのジェットは、驚くほど規則正しく噴出と休止を繰り返しており、その間隔はわずか100年程度です。原始星から上方向に吹き出すジェットは私たちから離れる方向へ動き、下方向に吹き出すジェットは私たちに向かって動いていることが観測から明らかになりました。
こうしたきわめて明瞭なジェットを観測することで、原始星を取り巻く降着円盤の環境に新たな知見を得ることができるかもしれません。物質の降着の過程は周囲を塵やガスに覆われているため直接見ることができませんが、そこから飛び出してくるジェットを観測することによって、間接的にその過程を知ることができます。へび座南領域のように多くの星が非常に狭い範囲で作られている場合、強力な分解能を持つアルマ望遠鏡は混沌としたジェットを見分ける際に大きな威力を発揮します。
アルマ望遠鏡のデータにより、原始星CARMA-7から22回のガス放出があったことが明らかになりました。放出されたガスは2兆4600億キロメートル(0.26光年)という長い距離を進み、周囲の星団に大きな影響を与えるとともに他の原始星から噴き出したジェットと混ざり合います。
以前の観測では、CARMA-7からのジェットと、それを取り巻くすぐ近くの原始星からのジェットを区別することができませんでした。「これらの天体はとても若くガスや塵に深く埋もれているため、原始星やそのジェットについては可視光でも近赤外線でもその様子を完全に明らかにすることができません」と、プランケット氏は言います。「この結果は、同種の領域の観測にとって、アルマ望遠鏡がどんなに価値のあるものであるかを実証しました。」
この研究成果は、Plunkett et al. “Episodic molecular outflow in the very young protostellar cluster Serpens South” として、2015年11月5日発行の英国の科学雑誌「ネイチャー」に掲載されました。
Credit: B. Saxton (NRAO/AUI/NSF); A. Plunkett et al.; ALMA (NRAO/ESO/NAOJ)