アルマ望遠鏡によって初めて、HR8799の周りの塵の円盤(太陽系ではカイパーベルトに相当)を高解像度で撮影することに成功しました。HR8799はこれまでに複数の惑星が直接撮像されている、唯一の星です。今回観測された塵の円盤の形について、特に内側の縁の位置は現在知られている惑星による影響ではまったく説明がつかないものでした。このことは時間を経て惑星の軌道が大きく変わったのか、あるいは未知の惑星が少なくともひとつ、まだ隠れていることを示唆しています。
「今回のデータによって、実に初めて円盤の内縁部を見ることができました」と、マーク・ブース氏(本研究の著者でチリ・カトリカ大学)は説明します。「今回の新たな観測に基づいて惑星と円盤の関係性を調べることによって、これまで私たちが観測していた惑星の軌道が過去には異なっていたこと、あるいは小さくて見えないけれど少なくとももうひとつ惑星が隠されていることがわかりました。」
この円盤の半径は太陽から地球の距離の150から420倍に相当し、この星の周りで続いているたくさんの彗星の衝突によってまき散らされた塵から作られています。アルマは円盤の中の数ミリメートルの塵の粒子からの放射を受信できます。アルマよりも波長の短い赤外線望遠鏡によるこれまでの観測では、この円盤の内縁部の問題は発見されていませんでした。かつての観測は解像度が十分でなかったためなのか、あるいは観測する波長によって見える塵粒子の大きさが違い、そのために分布が異なって見えるためなのか、どちらが真相を突いているのかはわかりません。
HR8799は、太陽の約1.5倍の質量を持つ若い星で、地球からペガスス座の方向に129光年離れたところに位置しています。
「今回、初めて複数の惑星をもつ星を周回する塵をとらえることができました。それはまさに私たちの太陽系と比較することで、その形成や仕組みの解明に近づいたことを意味します」と、論文の共著者であるアントニオ・ハレス氏(米国国立電波天文台(NRAO))は述べます。
この研究は、Booth et al. “Resolving the Planetesimal Belt of HR 8799 with ALMA” として、2016年5月に英国王立天文学会誌に掲載されました。
画像は、アルマ望遠鏡によるHR8799の周囲の塵の円盤です。右下のスケール、100AUは太陽と地球の距離(天文単位)の100倍を表しています。
右上の拡大図は、欧州南天天文台(ESO)のVLT望遠鏡によって撮像された画像で、★が中心星のHR8799、b,c,d,eはすでに観測されている惑星の場所を示しています。
Credit: Booth et al., ALMA (NRAO/ESO/NAOJ); A. Zurlo, et al