モンスター星の光で進化するオリオン大星雲

オリオン座の三ツ星の下に輝くオリオン大星雲では、活発な星形成活動が続いています。アルマ望遠鏡とIRAM30m望遠鏡を使った観測により、オリオン大星雲の中で生まれたばかりの巨大星にあぶられ、高い圧力で圧縮される分子ガスのようすがこれまでになく克明に描き出されました。

オリオン大星雲は地球から1400光年ほどの距離にあり、私たちに最も近い大質量星(太陽の10倍程度以上の質量を持つ星)形成領域です。オリオン大星雲には「トラペジウム」と呼ばれる4つの巨大な若い星があり、この星たちが放つ強烈な紫外線を受けてオリオン大星雲は輝いています。実は紫外線は星雲を輝かせるだけでなく、星雲を破壊する作用もあります。星は低温の分子ガス雲の中で生まれますが、大質量星は強烈な紫外線を放射することで周囲の分子を壊して原子ガスを作り、さらに原子を壊して電離ガス(「HII領域」)を作りだすのです。

下の画像の左側は、欧州南天天文台VLTの赤外線カメラHAWK-Iで撮影されたオリオン大星雲です。この画像で左上から右下に延びる帯のような構造は「オリオン・バー」と呼ばれ、画像右上にあるトラペジウムからの紫外線を受けてまさにガスが電離されている境界面です。今回研究者たちはアルマ望遠鏡とIRAM30m望遠鏡を使って「オリオン・バー」に沿う枠内に広がるHCO+(ホルミルイオン)ガスからの電波を観測し、2つの電波望遠鏡のデータを合成することで得られたのが画像の右側です。アルマ望遠鏡の高い解像度により、HCO+ガスの境界面が波打つように激しく乱されているのがはっきりとわかります。分子ガスが紫外線によってどのように壊されていくのか、その境界面では何が起きているのかを知る大きな手がかりになります。

この研究成果は、Goicoechea et al. “Compression and ablation of the photo-irradiated molecular cloud the Orion Bar” として、2016年8月10日発行の英国の科学雑誌「ネイチャー」オンライン版に掲載されました。

Credit: ESO/Goicoechea et al.; ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

Tags : 観測成果

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