国立天文台講演会/第23回アルマ望遠鏡講演会を開催

2月4日(日)に、国立天文台講演会/第23回アルマ望遠鏡講演会を東京都江東区の東京国際交流館(プラザ平成)国際交流会議場にて開催しました。「冷たい宇宙に挑むアルマ望遠鏡―惑星誕生のミステリーに究極技術で迫る―」と題し、3名が講演しました。

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アルマ望遠鏡の概要について講演する長谷川哲夫上席教授
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

最初の講師は、アルマ望遠鏡プロジェクトに長くかかわり、日本とチリでプロジェクトを率いてきた、長谷川哲夫(国立天文台チリ観測所、上席教授)です。講演は、電波で宇宙を観測することの解説から始まりました。そして、アルマ望遠鏡のように複数のアンテナを組み合わせて機能する干渉計の解説へ。続いて、アルマ望遠鏡の完成までの歴史と道のり、「アルマは一日にしてならず」と題した講演の佳境です。日本では国立天文台野辺山ミリ波干渉計の実績を元に大型電波干渉計計画が立案され、米欧で進んできた計画と合流してアルマ望遠鏡プロジェクトが誕生しました。国際協力プロジェクトならではの文化や考え方の違いを乗り越え、目指す望遠鏡の性能とコストのバランスを鑑みてプロジェクトを進めてきました。国際協同プロジェクトのまっただ中で体験した長谷川上席教授ならではの苦労話を交え、それでも宇宙に挑み続ける意味を語りました。

2人目の講師はノンフィクション作家の山根一眞氏。昨年夏に発刊された『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』(日経BPコンサルティング刊)の著者です。分厚い書籍には、アルマ望遠鏡の建設に従事した天文学者、技術者の奮闘と熱い想いが詰まっています。山根氏は南米チリ、標高5000mのアルマ望遠鏡を2度取材に訪れました。それだけでなく、アンテナや受信機、相関器の部品を製造したメーカーや全国の小さな町工場にも出向き、数多くの技術者に直接会い、言葉を交わし、アルマ望遠鏡のまさに細部まで取材してきました。講演は山根氏が撮影した写真や映像とともに取材時の裏話まで飛び出し、会場には時折、笑いや感嘆の声がわき上がりました。

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山根氏が持っているのは、アルマ望遠鏡の主鏡(パラボラアンテナのお皿の部分)に使われているアルミニウム・パネル。軽量化のため裏面はハニカム構造に削られている。厚みは約2mmと薄いため、大きさの割に軽く仕上がっています。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

3人目の講師は、武藤恭之氏。工学院大学にて准教授として研究を行う天文学者です。武藤氏は惑星形成過程に関する理論的研究を専門としていましたが、最近ではアルマ望遠鏡などを用いた観測的研究も進めています。2011年に動き始めたアルマ望遠鏡によって、それまでは理論的に考えられてきた惑星のできる過程を実際に確かめることができるようになってきました。アルマで観測した惑星形成の現場は天文学者にとって驚くべきものであり、講演では研究現場の興奮と奮闘が語られました。

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アルマ望遠鏡が撮影した惑星誕生の現場「おうし座HL星」について解説する武藤氏
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

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質疑応答の様子。左から長谷川哲夫上席教授、武藤恭之准教授、山根一眞氏。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

最後に設けた質疑応答の時間は来場者からの挙手が途切れず、宇宙の謎への探究心が果てないことを感じました。終演後のロビーでも各所で会話が弾み、講師にとっても充実した時間となりました。

講演の記録映像はYouTubeでご覧いただけます。
※当日、ネット中継に不具合があり、冒頭部分の配信ができませんでした。ご迷惑をおかけいたしました。現在、録画映像により復旧しています。

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