自然科学研究機構 国立天文台と大阪府立大学は、包括的な研究協力協定を2021年3月1日付で締結しました。
国立天文台と大阪府立大学はこれまで共同研究という形で、アルマ望遠鏡の受信機カートリッジ構造体の検討試作、バンド4受信機の開発、そして最も高い周波数帯であるバンド10受信機の開発を行ってきました。バンド4受信機は、大阪府立大学が基本設計および要素開発を推進した実績が認められ、日本が開発を担当するバンドの一つとなりました。また、バンド10受信機の開発では、その心臓部であるミキサの設計や性能評価における国立天文台と大阪府立大学との協力が、世界最高性能の実現に大いに貢献しました。バンド10受信機開発の成功を受けて、両機関等から成る開発チームは、超伝導科学技術の研究に関して卓越した業績に与えられる「超伝導科学技術賞」を2010年に受賞しています。
これらの業績は、アルマ望遠鏡による数多くの観測成果に結び付いているほか、大阪府立大学によるアルマ望遠鏡を用いた星形成に関する研究の精力的な展開にもつながっています。また、国立天文台 野辺山宇宙電波観測所のミリ波受信機「FOREST」や、アステ望遠鏡の345ギガヘルツ帯受信機の開発にも、本質的かつ重要な貢献をしています。
受信機の開発研究には多くの大阪府立大学の学生が参加していますが、中には現在の電波天文学の中核となる人材も出ています。また経験や取得した能力を生かした人材が、研究教育職だけではなく、さまざまな企業へと輩出されています。
本協定の締結を機に、両機関はその協力関係を今後ますます発展させていきます。
受信機のさらなる広帯域化に関しては、既に共同で開発した受信機が大阪府立大学の1.85メートル電波望遠鏡に搭載され観測に成功しています。この技術は今後、アルマ望遠鏡の性能を大幅に向上させ、さらなる研究成果の創出につながります。現在共同で開発している高性能の新型ミリ波受信機は、国立天文台野辺山の45メートル電波望遠鏡に搭載され、重水素を含む分子の観測によって星の誕生プロセスの解明に迫ることが期待されます。さらに本協定の締結は、世界と競争できる電波天文学の技術の向上に貢献する人材だけでなく、Society 5.0に貢献する人材の育成につながります。