理化学研究所の梅畑豪紀基礎科学特別研究員、国立天文台の松田有一助教などの国際共同研究チームは、アルマ望遠鏡、すばる望遠鏡、欧州南天天文台の VLT望遠鏡などを駆使した観測によって、地球から115億光年離れた宇宙において、銀河と銀河をつなぐように淡く帯状に広がった「宇宙網」と呼ばれる水素ガスの大規模構造を初めて発見しました。
宇宙網の観測は、銀河形成モデルを検証し、過去の宇宙における銀河と巨大ブラックホールの形成、進化を解明する上で欠かすことができませんが、宇宙網が放つ光は非常に弱く、これまで観測は困難を極めてきました。今回、研究チームは、みずがめ座の方向にある遠方銀河が群れ集まった領域である原始銀河団 SSA 22に注目し、X 線からミリ波にわたる幅広い波長にわたる多様な観測によって、18個の活発な星形成銀河や巨大ブラックホールが400万光年の範囲で宇宙網に沿って形成されていることを突き止めました。初期宇宙における銀河や巨大ブラックホールの成長の源となったガスの供給機構の解明に大きく貢献すると期待される、重要な成果です。
詳しくは、すばる望遠鏡プレスリリース をご覧ください。
論文・研究チーム
この観測成果は、T. Umehata et al. “Gas filaments of the cosmic web located around active galaxies in a protocluster”として、2019年10月3日付の科学誌「サイエンス」オンライン版に掲載されました。
この研究を行った研究チームのメンバーは、以下の通りです。
梅畑豪紀 (理化学研究所/東京大学), M. Fumagalli (Durham University), I. Smail (Durham University), 松田有一 (国立天文台/総合研究大学院大学), A. M. Swinbank (Durham University), S. Cantalupo (EHT Zurich), C. Sykes (Durham University), R. J. Ivison (ESO/University of Edinburgh), C. C. Steidel (Caltech), A. E. Shapley (UCLA), J. Vernet (ESO), 山田亨 (JAXA), 田村陽一 (名古屋大学), M. Kubo (Durham University), 中西康一郎 (国立天文台/総合研究大学院大学), 鍛冶澤賢 (愛媛大学), 廿日出文洋 (東京大学), 河野孝太郎 (東京大学)
この研究は、日本学術振興会科学研究費補助金 JP17K14252, JP25287043, JP17H04831, JP17KK0098, JP19K03925, JP17H06130, JP17H06130 および国立天文台アルマ共同科学研究事業 2018-09B による支援を受けて行われました。