私たちが暮らす太陽系が宇宙の中でどれほど貴重な存在であるのか、もしくはありふれた存在であるのかを理解する上で星や惑星系が形成される仕組みを明らかにすることは欠かせない。星は星間空間に漂うガスや塵が自らの重力で集まって生まれる。生まれた星の周りにはまだたくさんのガスが残っていて(エンベロープガス)星に向かって降り注いでいる。それと同時に、星の周りでは原始太陽系のもととなるガス円盤が成長する。これまで、(1) ガス円盤がどのように作られるか、(2) そのとき、エンベロープガスの化学組成がどのような変遷を受けるか、について観測的に捉えられたことはなく、このようなデータが得られれば太陽系の成り立ちについての理解がさらに深まると期待される。
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東京大学大学院理学系研究科の坂井助教らは、電波望遠鏡アルマを用いて若い原始星L1527を観測し、生まれつつある円盤の外縁部で化学組成が劇的に変化していることを発見した。これまで、星間空間の物質は静々と惑星系円盤に降り積もり、取り込まれていくと考えられていた。しかし、実際には星に降り注ぐエンベロープガスが遠心力のために円盤の外縁部で滞留し、そこで局所的な加熱が起こって大きな化学変化を引き起こしていることがわかった。今回、この化学変化を見つけたおかげで、円盤が成長しつつある外縁部をくっきりと捉えることもできた。
この大きな化学変化はかつて太陽系でも起こっていた可能性がある。太陽系の物質的起源は隕石の分析や小惑星探査などで調べられているが、それらとの関連の探求がますます重要になっている。
この研究成果は、Sakai et al. “Change in the chemical composition of infalling gas forming a disk around a protostar” として、科学雑誌Nature 2014年2月12日号に掲載されます。
この研究は、文部科学省科学研究費補助金、基盤研究(S) 21224002, 基盤研究(C) 25400223, 新学術領域研究「宇宙分子進化」25108005、および日本学術振興会日仏共同セミナーSAKURAプログラムの補助を受けて行われました。
図.回転しながら原始星へと落ち込むガスのイメージ図。星を取り囲むガスの中で、リング状に一酸化硫黄分子が豊富に含まれる部分が分布している(図中で青く示されているリング)。その内側には原始惑星系円盤が形成されている。
Credit: 東京大学