連星系で作られる惑星の軌道の謎に迫る

アルマ望遠鏡を用いた観測によって、連星系を取り巻く原始惑星系円盤の新たな性質が明らかになりました。軌道の小さな連星系では、連星系の軌道面と原始惑星系円盤の軌道面が一致していましたが、間隔の離れた連星系では、連星系の軌道面に対して原始惑星系円盤が大きく傾いていたのです。この発見は、重力が複雑にはたらく連星系のまわりでの惑星形成に、新たな光を当てるものと言えます。

過去20年余りにわたって、太陽以外の星のまわりに惑星(太陽系外惑星)が多数発見されてきました。その中には、映画「スターウォーズ」に登場する惑星「タトゥイーン」のように、連星のまわりを回るものもあります。私たちが住む太陽系には太陽がひとつしかありませんが、太陽がふたつある場合があるのです。宇宙にある星の多くは、太陽のようなひとりっ子ではなく、双子(あるいはそれ以上)で生まれてくることが知られています。このような場合を、連星と呼びます。太陽がふたつあったとしたら、そのまわりで惑星はどのように作られるのでしょうか?

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連星のまわりを回る惑星の想像図。
Credit: NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello

惑星は、一般的には若い星を取り巻く塵とガスの円盤(原始惑星系円盤)の中で作られます。原始惑星系円盤は、アルマ望遠鏡など多くの望遠鏡ですでに観測が進められていますが、その多くは、単独の星のまわりの原始惑星系円盤でした。

連星を取り巻く原始惑星系円盤(周連星系円盤)の観測は、多様な環境での惑星形成過程を理解するために重要です。これまでの観測から、波打つようにゆがんだ周連星系円盤が発見されたり、連星の軌道面に対して傾いた周連星系円盤が見つかったりしています。極端な場合では、連星の軌道と周連星系円盤がほぼ直交するものも発見されています。

カリフォルニア大学バークレー校のイアン・チェカワ氏らの研究チームは、アルマ望遠鏡が観測した19個の周連星系円盤のデータを活用し、連星の軌道と周連星系円盤の傾きについて研究しました。チェカワ氏は、「この研究で、周連星系円盤の典型的な特徴を知りたいと考えていました。高い解像度を持つアルマ望遠鏡は、これまで観測された中で最も小さく暗い周連星系円盤を観測するのに欠かせませんでした。」とコメントしています。

研究チームは、アルマ望遠鏡のデータと、アメリカ航空宇宙局(NASA)のケプラー宇宙望遠鏡で連星系のまわりに発見された惑星の性質を比較しました。驚くべきことに、連星系の軌道面と周連星系円盤の傾きの一致度は、連星の軌道周期と強い相関を示していました。連星系の軌道周期が短い、つまりふたつの星の間隔が小さな連星系ほど、連星系の軌道と周連星系円盤の向きがよく一致していたのです。逆に、軌道周期が長い連星系(間隔の大きな連星系)では、周連星系円盤は連星系の軌道面から大きく傾いていました。

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アルマ望遠鏡で観測された、周連星系円盤(連星系を取り巻く原始惑星系円盤)の例。観測画像に、連星の軌道を書き加えています。左はHD 98800Bと呼ばれる連星系(軌道周期は315日)の円盤で、中央の連星系の軌道面と円盤面が一致していません。右はさそり座AK星と呼ばれる連星系(軌道周期13.6日)で、連星系の軌道面と円盤の傾きが一致しています。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), I. Czekala and G. Kennedy; NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello

チェカワ氏は「私たちは、コンパクトな連星系を回る周連星系円盤と、ケプラー宇宙望遠鏡によって連星系のまわりに見つかった惑星の性質が、よく一致していることに気づきました。」とコメントしています。ケプラー宇宙望遠鏡は連星系を回る惑星も発見していますが、これらは、軌道周期が40日以内の小さな連星系でだけ見つかっています [1] ケプラーの定常観測期間が4年間に限られていたため、より大きな連星系を回る惑星を捉えることができなかったのです。連星系が大きい場合、そのまわりを回る惑星の軌道周期も長くなり、ケプラーの観測期間中に惑星の兆候を捉えるのが難しくなります。
。発見された惑星の軌道面は、すべて連星系の軌道面と一致していました。では、連星系の軌道面と一致しない惑星を、ケプラーはどれくらい見逃しているのでしょうか?チェカワ氏はこの疑問に対して、「私たちの研究では、ケプラーが見逃してしまうような大きく軌道の傾いた惑星はさほど多くない、という結論に達しました。アルマ望遠鏡による観測の結果、小さな連星系の周連星系円盤は連星系の軌道面とよく一致しているからです。」と答えています。

今回の研究からは、間隔の大きな連星系には軌道の大きく傾いた惑星が存在しうることもわかりました。このような惑星は、直接撮影や重力レンズを使った方法などによって発見が期待できます。

チェカワ氏らは、小さな連星系において連星系の軌道面と周連星系円盤の傾きがこれほど一致している理由を探りたいと考えています。「アルマ望遠鏡や、現在構想中の次世代電波望遠鏡ngVLAを使って、円盤の構造をこれまでにないほど詳しく調べたいと考えています。そして、円盤のねじれや傾きが惑星形成環境にどのような影響を及ぼすのか、その中で作られる惑星の性質にどう影響するのかを明らかにしたいのです。」とチェカワ氏は今後の展望を述べています。

「この研究は、観測の積み重ねによって新しい発見が生み出される好例と言えます。アルマ望遠鏡を使ってこれまで多くの研究者が原始惑星系円盤を観測し、得られたデータが蓄積されてきました。これを基盤として初めて、周連星系円盤の特徴を見分けることができたのです。」と、米国立科学財団でアルマ望遠鏡と米国立電波天文台を統括するジョー・ペセ氏はコメントしています。

この記事は、2020年3月19日発表の米国立電波天文台プレスリリースに基づいて作成しました。


論文情報
この研究成果は、I. Czekala et al. “The Degree of Alignment between Circumbinary Disks and Their Binary Hosts”として、米国の天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に2019年9月17日付で掲載されました。

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1. ケプラーの定常観測期間が4年間に限られていたため、より大きな連星系を回る惑星を捉えることができなかったのです。連星系が大きい場合、そのまわりを回る惑星の軌道周期も長くなり、ケプラーの観測期間中に惑星の兆候を捉えるのが難しくなります。

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