アルマ望遠鏡が、太陽に接近中の46P/ウィルタネン彗星を観測しました。高い解像度を活かして、彗星中心部のガスの成分や分布の調査が進んでいます。
「この彗星は地球にも近づいて明るく見えるので、プロの天文学者からもアマチュア天文家からも注目されています。つまり、他の彗星よりずっと詳しく観測できるのです。」とNASAの天文学者マーティン・コーディナー氏はコメントしています。コーディナー氏は、アルマ望遠鏡を使ったウィルタネン彗星観測の代表者でもあります。「彗星が太陽に近づけば近づくほど、氷を含む彗星本体の温度が上がり、内部に持っていた水蒸気やさまざまな物質をふきだすようになります。これが、彗星の尾になります。」
アルマ望遠鏡では、「汚れた雪玉」とも形容される彗星核を取り巻くシアン化水素分子(HCN)が放つ電波を観測しました。そして、HCN分子の分布をとらえることに成功しました。
観測から、彗星核のまわりにコンパクトにまとまったHCNガスと、それよりも大きく非対称に広がったHCNガスが写し出されました。しかし彗星が非常に近いため、大きく広がったガスのほとんどはアルマ望遠鏡では見ることができないほどでした。
ウィルタネン彗星は、およそ5.4年の周期で、細長い楕円軌道を取りながら太陽のまわりをまわっています。有名なハレー彗星の周期は約76年ですから、ウィルタネン彗星は短い周期で何度も太陽や地球に近づいてきます。今回は2018年12月16日に地球に最接近し、その距離は1160万kmでした。これは地球と月の間の距離のおよそ30倍に相当します。アルマ望遠鏡の観測は、12月2日と9日に行われました。この時の地球からの距離は1650万kmと1360万kmでした。