2018. 12. 23

【ALMAメールマガジン】超巨大ブラックホールを取り巻くドーナツ構造の正体を暴く

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国立天文台アルマ望遠鏡メールマガジン

ALMA Mail Magazine 2018年12月23日号
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今夜は「月齢16」。アルマ望遠鏡の話題をお届けします。

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◎超巨大ブラックホールを取り巻くドーナツ構造の正体を暴く

国立天文台の泉拓磨氏、鹿児島大学の和田桂一氏を中心とする研究チームは、
アルマ望遠鏡を使ってコンパス座銀河の中心に位置する超巨大ブラックホールを
観測し、その周囲のガスの分布と動きをこれまでになく詳細に明らかにすることに
成功しました。活動的な超巨大ブラックホールの周囲にはガスや塵のドーナツ状
構造が存在すると考えられてきましたが、その成因は長年の謎でした。アルマ望遠鏡
による観測結果とスーパーコンピュータによるシミュレーションを駆使することで、
超巨大ブラックホールの周囲を回りながら落下していく分子ガス円盤と、超巨大
ブラックホールのすぐ近くから巻き上げられる原子ガスの存在が浮かび上がり、
これらの「ガスの流れ」が自然とドーナツ的構造を作っていることが確かめられ
ました。この結果は、存在そのものは天文学の教科書に掲載されていながら、その
詳しい構造・運動・形成メカニズムがわかっていなかったドーナツ状構造の正体を
暴いた、重要な成果といえます。

http://c.bme.jp/14/924/43/5462

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◎アルマ望遠鏡がシャープにとらえた惑星誕生20の現場

アルマ望遠鏡を使って、20個の若い星が観測されました。若い星のまわりには塵の
円盤が取り巻いており、ここで塵が合体して次第に大きくなり、やがて惑星ができる
と考えられています。惑星誕生現場はこれまでもアルマ望遠鏡によって高解像度で
写し出されてきましたが、今回は50時間以上の長い観測時間をかけて20個の若い星の
まわりの塵の円盤を観測し、その多様性や普遍性を明らかにすることを狙いました。
観測の結果を総合すると、太陽系の天王星や土星に似た大きさ・組成の比較的大きな
惑星は、現在理論的に提唱されているよりもずっと短い時間で作られるのではないか、
と研究チームは考えています。そして、こうした大きな惑星たちは、中心星から遠く
離れた惑星系の外側で作られることが多いようです。

http://c.bme.jp/14/924/44/5462

◎巨大ブラックホール周辺の磁場を初めて測定
 -ブラックホールコロナの加熱メカニズム特定へ-

理化学研究所の井上芳幸上級研究員らの研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて、
巨大ブラックホール周辺に存在する「コロナ」からの電波放射を観測し、コロナの磁場
強度の測定に初めて成功しました。太陽を取り巻く高温のコロナと同じく、ブラック
ホール周辺のコロナも磁場によって加熱されていると考えられてきましたが、今回測定
された磁場は理論的に予測されていたよりずっと弱いものでした。本研究成果は、これ
までの巨大ブラックホール周辺構造の理解に再考を迫るものと考えられます。

http://c.bme.jp/14/924/45/5462

◎国立天文台先端技術センター 小嶋崇文氏、IEEE Microwave Theory
 and Techniques Society Japan Young Engineer Awardを受賞

国立天文台先端技術センターでアルマ望遠鏡の新しい受信機を開発している
小嶋崇文氏が、IEEE Microwave Theory and Techniques Society Japan Young
Engineer Awardを受賞しました。現在アルマ望遠鏡に搭載されている受信機に
比べ、より幅広い周波数帯の電波を一度に受信できる受信機の開発が高く評価
されました。アルマ望遠鏡のさらなるパワーアップにつながる技術開発です。

http://c.bme.jp/14/924/46/5462

◎アルマ望遠鏡で見たウィルタネン彗星

アルマ望遠鏡が、太陽に接近中の46P/ウィルタネン彗星を観測しました。12月16日に
地球に最接近したこの彗星を、アルマ望遠鏡では12月2日と9日に観測しました。
彗星を取り巻くシアン化水素分子(HCN)の分布を明らかにしたほか、高い解像度を
活かして、彗星中心部のガスの成分や分布の調査が進んでいます。

http://c.bme.jp/14/924/47/5462

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afterword
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2018年最後のアルマ望遠鏡メールマガジンです。今年もアルマ望遠鏡で新しい宇宙の
姿を数多くお届けしてきましたが、いかがでしたでしょうか。今年のハイライトを
ここでいくつかご紹介したいと思います。

5月に発表した「132.8億光年彼方の銀河に酸素を発見」のニュースは報道でも多く
取り上げられました。これまでのアルマ望遠鏡観測で更新されてきた酸素の最遠方
検出記録をみたびみずから更新し、宇宙のはじまり、宇宙最初の銀河にまた一歩
迫った成果といえます。
http://c.bme.jp/14/924/48/5462

アルマ望遠鏡にとっての大きな研究テーマである『惑星の誕生』についても、
さまざまな成果をご報告しました。たとえば、「生まれたばかり」といってもいい
ほど若い星のまわりにもガスと塵の円盤が見つかりました。
http://c.bme.jp/14/924/49/5462
これまで提唱されていた惑星誕生のシナリオとは合わない観測成果も出てきていて、
アルマ望遠鏡の観測成果をきっかけにして、研究が一気に前進しているところです。
まさに教科書が書き換わるタイミング、といってもいいでしょう。

ここで紹介したもの以外にもたくさんの成果が出てきています。アルマ望遠鏡の
観測をもとに発表された論文の数は全世界で1200を超えていて、天文学の幅広い
分野に大きなインパクトを与えています。

さて、来年はどんな成果をお伝えできるでしょうか。広報担当としてもたいへん
ワクワクしながら次の成果を待っているところです。是非、ご期待ください。

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