アルマ望遠鏡が捉えた惑星系形成の現場:惑星の外側で塵が集まり、次の惑星が生まれる様子
アルマ望遠鏡は、すでに形成された惑星の外側に、次なる惑星の材料となる塵が局所的に集まっている現場を捉えました。国立天文…
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国立天文台アルマ望遠鏡メールマガジン
ALMA Mail Magazine 2017年7月10日号
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今夜は「月齢16」、
アルマ望遠鏡の話題をお届けします。
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pick up!
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◎産声から探る巨大赤ちゃん星の成長
国立天文台/総合研究大学院大学の廣田朋也
氏を中心とする研究チームは、アルマ望遠鏡を
使って、オリオン大星雲の中に潜む巨大原始星
「オリオンKL電波源I(アイ)」を観測し、原始星
から勢いよく噴き出すガス(アウトフロー)が回転
していることをはっきり捉えることに成功しました。
その回転は巨大原始星を取り巻くガス円盤の
回転と一致しており、円盤の遠心力と磁場の力
によってアウトフローが宇宙空間に押し出されて
いることを示す、確固たる証拠といえます。
巨大原始星の誕生メカニズムには謎が多く残さ
れていますが、回転しながら噴き出すガスを
明確に描き出した今回の観測成果は、その謎の
解明に大きく一歩を踏み出すものといえます。
https://alma-telescope.jp/news/press/orion-201706
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topics
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◎「ハンバーガー原始星」を取り巻く有機分子と回転ジェット
生まれたばかりの原始星HH212は、星を取り
巻く塵の円盤を真横から見る形になっていて、
その中心面に暗い筋が入っているため、まるで
ハンバーガーのように見えます。台湾 中央研究
院天文及天文物理研究所のチンフェイ・リー氏を
はじめとする研究チームは、この「ハンバーガー
原始星」をアルマ望遠鏡で観測し、ふたつの大き
な発見をしました。
ひとつめの発見は、原始星を取り囲む円盤の
上空部分に、複雑な有機分子を発見したこと、
もうひとつの発見は、この原始星から噴き出す
ガスのジェットが回転していることを明らかに
したことです。これは、星の誕生に関する長年の
謎である「ガスがどのように原始星に降り積もる
のか」という問題を解く手がかりになるものです。
https://alma-telescope.jp/news/space_hamburger-201707
◎乱流の中で生まれた互い違いの双子星
アルマ望遠鏡による観測で、「離れた連星系が
どのようにして生まれるのか」という天文学の
長年の謎に決定的な答えが導き出されました。
韓国・キョンヒ大学のジョンユァン・リー氏と国立
天文台の立松健一氏らをはじめとする国際研究
チームは、連星をなす生まれたばかりの2つの
星の自転軸が互いに傾いていることを発見しま
した。これは、大きなガスのかたまりが乱流に
よってちぎれ、それぞれの中で星が生まれたこと
を示しています。より近い位置にあった2つの星
の間隔が次第に大きくなったことで離れた連星系
が作られる、という説もありましたが、今回の観測
はこの考え方を明確に否定するものであり、連星
形成に乱流が大きな役割を果たしていることを
強く示唆しています。
https://alma-telescope.jp/news/twin_baby_stars-201707
◎太陽に似た若い星のまわりに、アミノ酸の材料を発見
アルマ望遠鏡が、非常に若い段階にある星の
まわりで、生命の材料であるイソシアン酸メチル
を発見しました。将来太陽に似た星になるで
あろう若い星のまわりでこの分子が見つかった
のは、これが初めてです。この発見は、地球の
生命がどのように発生したのかを探る手がかり
になるかもしれません。
https://alma-telescope.jp/news/methyl_isocyanate-201706
◎地球サイズの望遠鏡でブラックホール撮影に挑む
【6】超巨大電波望遠鏡の作り方
ブラックホールは強大な重力を持つ天体ですが、
地球から見るとその大きさは針でついたほどの
大きさにしか見えません。その姿を撮影するに
は、常識外れともいうべき超高解像度の望遠鏡
が必要になります。そんな望遠鏡は、どうすれば
実現できるのでしょうか?
https://alma-telescope.jp/column/bhimaging6
◎地球サイズの望遠鏡でブラックホール撮影に挑む
【7】銀河中心に潜む怪物 いて座A*
世界中の電波望遠鏡をつないで狙う第一の
ターゲットは、私たちが住む天の川銀河の中心
に潜む超巨大ブラックホール「いて座A*(エー
スター)」です。いて座A*の観測によって、
ブラックホールそのものだけでなく、この世の
時空に関する理論についても理解を深めること
ができると期待されています。しかし、わずか
20年ほど前には、いて座A*が巨大ブラック
ホールであるという確証は得られていません
でした。ここで少し歴史を紐解きながら、
いて座A*についてご紹介しましょう。
https://alma-telescope.jp/column/bhimaging7
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event
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◎7月15日(土)17:00~18:00
駿台天文講座「アルマ望遠鏡で探る星々のルーツ」
講師:平松正顕(国立天文台チリ観測所 助教)
会場:駿台学園中学校・高等学校(東京都北区)
http://www.sundaigakuen.ac.jp/observatory/astronomy_lecture/47th.html
◎8月26日(土)9:30~16:00
野辺山特別公開2017
場所:長野県 国立天文台野辺山
内容:ポスター展示、映像上映、受信機展示、ミニ講演会、アルマVR体験など
http://www.nro.nao.ac.jp/visit/open2017/open2017_top.html
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afterword
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pick up!でご紹介した赤ちゃん星の観測成果、
ちょうど発表の前日に誕生した上野動物園の
パンダの赤ちゃんとともにニュースでも報じら
れました。パンダとは異なり星の誕生や成長
はあまりにゆっくりと進むため、変化していく
様子を時間とともに見ていくことができません。
そのため、研究者は、赤ちゃん、子ども、成人、
老年、とそれぞれの年代の星を観測することで
その一生を解き明かそうとしています。
pick up!のターゲットは、太陽の8倍以上という
大きな質量の原始星です。一方、7月5日に
発表したばかりの「ハンバーガー原始星」は、
太陽の2割ほどという小さな質量の原始星です。
原始星の質量によってジェットの様子が同じ
なのか、異なるのか、これは星の誕生の
メカニズム解明への重要な手がかりになるかも
しれません。今回の成果は、大質量原始星と
小質量原始星、どちらの星からも噴き出す
ジェットが回転している様子がとらえられました。
ひとつひとつの研究成果は小さいものですが、
それらをあわせると星の誕生の謎に迫ることが
できます。パンダの成長を見守るように、研究の
進捗をゆっくりと楽しんでみるのもおすすめです。
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