2017. 9. 7

【ALMAメールマガジン】 天の川銀河で中質量ブラックホール候補の実体を初めて確認

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国立天文台アルマ望遠鏡メールマガジン

ALMA Mail Magazine 2017年9月7日号
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今夜は「月齢16」
アルマ望遠鏡の話題をお届けします。

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pick up!
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◎天の川銀河で中質量ブラックホール候補の実体を初めて確認

慶應義塾大学理工学部物理学科の岡 朋治
教授らの研究チームは、アルマ望遠鏡を使用
して、天の川銀河の中心部分に発見された
特異分子雲CO–0.40–0.22の詳細な電波観測を
行いました。この特異分子雲は、天の川銀河
中心核「いて座A*(エー・スター)」から約200光年
離れた位置にあり、その異常に広い速度幅から
内部に太陽の10万倍の質量をもつブラックホール
が潜んでいる可能性が指摘されていました。
観測の結果、特異分子雲CO–0.40–0.22の中心近く
に、コンパクトな高密度分子雲と点状電波源
CO–0.40–0.22*を検出しました。検出された点状
電波源は、いて座A*の1/500の明るさを持ち、
プラズマまたは星間塵からの熱的放射とは明らか
に異なるスペクトルを示しています。また、重力
多体シミュレーションを行った結果、周囲のガスの
分布と運動が非常に良く再現できることが分かり
ました。

これらのことから点状電波源CO–0.40–0.22*は、
存在が示唆されていたブラックホール本体である
と考えられます。これは、我々が住むこの天の川
銀河において「中質量ブラックホール」候補の
実体を確認した初めての例になります。
https://alma-telescope.jp/news/press/imbh-201709

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topics
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◎アルマ望遠鏡、乱流に満ちた大量の低温ガスを遠方銀河で発見

アルマ望遠鏡による観測で、遠方の爆発的
星形成銀河の周囲を取り巻く大量の冷たい
ガスが見つかりました。CH+という分子イオンが
放つ電波の検出に初めて成功したことで、宇宙
の歴史の中で星が最も多く生まれていた時期
を調べる新たな手法を獲得することができました。
猛烈な勢いで進む星形成がどうして長続きする
のか、という謎に対して、この分子イオンの存在
は新しい光を当てるものです。
https://alma-telescope.jp/news/turbulent_reservoir-201708

◎アルマ望遠鏡科学観測サイクル5の観測提案審査が完了

2017年10月から開始されるアルマ望遠鏡科学
観測サイクル5で実行される観測提案の審査が
完了し、提案を出していた天文学者に審査結果
が通知されました。サイクル5には、世界中から
1661件(重複等を除く)の観測提案が提出され
ていました。146名の天文学者が審査員となった
最終審査の結果433件の提案が採択されました。
サイクル5の観測は2017年10月から2018年9月
まで、全66台中56台以上のアンテナを使って
実施されます。低い周波数帯においてはアンテナ
の展開範囲が最大で16kmまで拡大され、最高
解像度は0.018秒角(人間の視力に換算すると
約3300)に達します。
https://alma-telescope.jp/news/cycle5_start-201708

◎夏休みジュニア天文教室 電波編

国立天文台では、夏休みに小中学生向けの
天文教室を行なっています。今年は7月31日
から8月2日まで、日によって様々なプログラム
で行なわれました。8月2日は「電波望遠鏡観測
体験」として、チリ観測所助教の平松正顕が
講師を務めました。
実際に電波望遠鏡を動かして太陽の電波を
受信する体験や、天体の画像化を模した電波
ぬり絵を行ないました。最後は活発な質疑応答
が行なわれ、天文学に対する関心の高さが
うかがえました。
https://alma-telescope.jp/news/junior_lecture-201708

◎平石好伸 在チリ日本大使のアルマ望遠鏡施設訪問

今年着任された平石好伸大使ご夫妻をはじめ
とする在チリ日本国大使館の御一行が、
7月29日にアルマ望遠鏡の山頂施設を見学
されました。雪が残っている影響で足元は一部
ぬかるんでいましたが、風もなく天候に恵まれ、
アンテナ移動のようすなどをご覧いただくことが
できました。
https://alma-telescope.jp/news/ambassador_hiraishi-201708

◎梶田隆章さん、アルマ望遠鏡施設訪問

東京大学宇宙線研究所長で国立天文台運営
会議メンバーでもある2015年ノーベル物理学賞
受賞者の梶田隆章さんが日智修好120周年
記念講演会のためにチリを訪問され、これに
あわせて6月25日にアルマ望遠鏡の山頂施設を
見学されました。
岐阜県・神岡の地下でスーパーカミオカンデを
運用するグループを率いる梶田さんですが、
「高地は高地で大変なことが多そうですね」
「動かさないといけないものがいっぱいあって
大変そうですね」と印象を述べておられました。
https://alma-telescope.jp/news/kajita-201706

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event
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◎9月18日(月・祝)12:50-16:00(開場 12:00)(予定)
第24回自然科学研究機構シンポジウム
会場:東京国際交流館(プラザ平成) 国際交流会議場(東京都)
定員:250名、事前申込制(先着順)、参加無料
内容:チリ観測所は、3階メディアホールの展示会場にて、
研究所紹介のブース出展を行ないます。
http://www.nins.jp/public_information/sympo24.php

◎10月13日午後2時~7時・14日午前10時~午後7時
三鷹・星と宇宙の日2017
13日は限定的なプレ公開、14日は本公開
会場:国立天文台三鷹(東京都) 他
内容:ポスター展示、映像上映、アルマ望遠鏡受信機展示、
ミニ講演会、アルマVR体験、他
https://www.nao.ac.jp/open-day/2017/

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afterword
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8月26日(土)に国立天文台野辺山の特別公開
が開催されました。チリ観測所はアルマ・アステ
望遠鏡について、展示を行ないました。朝は雨
が降り、天候が心配されましたが、日中はよく
晴れ、高原のすがすがしい空気の中、たくさんの
方が見学に訪れていました。
毎年好評のミニ講演会は4回行い、のべ200名
もの方が参加されました。また、最新成果を
ポスターでご紹介したほか、現地の地形と
アンテナの位置を再現したジオラマ、本物と同じ
大きさで作られている受信機を展示しました。
もうひとつ定番になりつつあるアルマVR体験で
は、なかなか行くことのできないアルマ望遠鏡
施設を、VRゴーグルによる360度映像でご覧
いただきました。一日を通して行列が絶えず、
長時間おまちいただいた方もいらっしゃいまし
たが、映像に入り込んだような体験の満足度は
高かったようです。

来月、10月13日・14日は国立天文台三鷹での
特別公開、三鷹・星と宇宙の日が開催されます。
チリ観測所の日本の拠点である三鷹では、
スタッフ総出で皆様をお迎えします。受信機を
開発した先端技術センターや他のプロジェクト、
50cm望遠鏡による観望会もありますので、
一日中楽しむことができます。皆様お誘い合わ
せの上、ぜひお越しください。
https://www.nao.ac.jp/open-day/2017/

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