2021. 5. 18

【ALMAメールマガジン】129億年前から銀河は回転していた
―アルマ望遠鏡と天然のレンズが捉えた宇宙初期の小さな銀河とその内側

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国立天文台アルマ望遠鏡メールマガジン
ALMA Mail Magazine 2021年4月28日号
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今夜は「月齢16」。アルマ望遠鏡の話題をお届けします。

 

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Pick up!
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◎ 129億年前から銀河は回転していた
―アルマ望遠鏡と天然のレンズが捉えた宇宙初期の小さな銀河とその内側

アルマ望遠鏡を使った観測で、ビッグバン後9億年の宇宙に、天の川銀河の1/100の質量しかない小さな銀河が発見され、さらにこの銀河が回転によって支えられていることがわかりました。これほど若い時代の宇宙で、これほど小さな銀河が回転に支えられていることが分かったのは、今回が初めてのことです。これは、この小さな銀河より手前にある銀河の大集団(銀河団)の重力によって光が増幅される「重力レンズ効果」のおかげです。宇宙初期にはこれまでの観測ではとらえられないような暗くて小さな銀河が多かったと考えられますが、今回の研究はそうした「普遍的な銀河」の姿に初めて切り込み、これまでにない解像度で描き出しています。
https://alma-telescope.jp/news/press/alcs-202104
 

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Topics
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◎第25回アルマ望遠鏡講演会をオンラインで開催
今年度の国立天文台講演会/第25回アルマ望遠鏡講演会は、3月6日(土)にオンラインで開催されました。チリ共和国の首都サンティアゴにある国立天文台チリ観測所の高橋智子准教授と中継をつなぎ、時差を考慮して日本では朝9時(チリ時間21時)からのスタートとなりました。講演テーマは、「暗黒の雲から生まれる星たち~観測の現場から最新成果まで~」。同じ天文学者でありながら、異なる立場でアルマ望遠鏡に関わる3名が講演しました。 https://alma-telescope.jp/news/almatalk-202103

なお、この講演の録画はYouTubeでもご覧いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=v7eq4LlRRq8

 

◎ 2020年度国立天文台若手研究者奨励賞をChat Hull特任助教が受賞
国立天文台若手研究者奨励賞は、2018年度に国立天文台30周年を記念し創設された賞で、優れた研究業績を上げた国立天文台の若手研究者が、将来国立天文台や国内外で研究リーダーとして活躍することを期待し、若手研究者を奨励することを目的としています。2020年度は、国立天文台チリ観測所のChat Hull特任助教 / NAOJフェローが受賞しました。研究テーマは、「最も若い原始星の形成における磁場の役割」です。
https://alma-telescope.jp/news/youngresearcher-202104

 

◎多波長同時観測でさぐるM87巨大ブラックホールの活動性と周辺構造
―地上・宇宙の望遠鏡が一致団結―

2017年4月、イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)と地球上の各地、さらに宇宙にある多くの電波望遠鏡、可視光線・紫外線望遠鏡、X線望遠鏡、ガンマ線望遠鏡が、楕円銀河M87の中心にある巨大ブラックホールを一斉に観測しました。そのデータを組み合わせることで、この巨大ブラックホールがこのとき非常に「おとなしい」状態にあったことが明らかになりました。また、観測結果と理論・シミュレーション研究の結果を比較したところ、EHTで観測されたリング状の電波放射領域とは異なる場所でガンマ線が放射されていると考えると、観測結果をうまく説明できることがわかりました。これは、巨大ブラックホールが噴き出すジェットが複雑な構造を持っていることを示す結果であり、ジェットの形成や多彩な電磁波放射メカニズムの解明に重要な手がかりを与える成果といえます。アルマ望遠鏡は2017年4月のEHTによる観測に参加したほか、アルマ望遠鏡単体としてもジェットの大規模な構造を描き出すことに貢献しました。
https://alma-telescope.jp/news/m87mwl-202104
 

◎太陽にもっとも近い恒星の巨大フレアを多波長で初観測
アルマ望遠鏡等を使った観測で、太陽にもっとも近い星であるプロキシマ・ケンタウリの表面で起きる大爆発(フレア)が観測されました。このフレアは、太陽で見られる同様のフレアよりも100倍も強力であり、プロキシマ・ケンタウリでこれまでに観測されたフレアの中では最大規模です。今回の観測は、星の表面でフレアが発生する仕組みを理解するヒントを与えてくれるだけでなく、太陽系外の惑星における生命の存在可能性を考えるうえでも重要な情報を与えてくれます。
https://alma-telescope.jp/news/proxima-202104
 

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Events
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◎ ノーベル賞受賞100年記念「 アインシュタイン展」開催中
会場:名古屋市科学館 理工館 地下2階イベントホール
日時:2021年3月20日(土)~6月6日(日)9:30~17:00 入場は16:30まで
(毎週月曜日・4月16日・5月6日・5月21日 休館)
20世紀最高の物理学者と称される、アルバート・アインシュタイン(1879~1955年)。ノーベル物理学賞受賞100年記念の特別展を開催します。「一般相対性理論」や「特殊相対性理論」などのアインシュタインの科学理論や、日本とのつながりなどを、国内外の貴重な資料やゲーム体験や科学おもちゃを通して子どもたちが楽しみながら学べる内容です。

来場にあたっては感染対策にご留意いただき、開催状況についてはウェブサイトをご参照ください。
https://einstein-nagoya.com/

 

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Afterword
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2011年に科学観測を開始したアルマ望遠鏡は、2021年で10周年を迎えます。
この10年を振り返り、アルマ望遠鏡が挑んでいる謎についてご紹介するインタビュー映像を2本作成しました。惑星の誕生に関する研究と、宇宙における有機分子を探る研究。いずれも、アルマ望遠鏡の登場によってこの10年間で大きく進展した分野です。ぜひ、お楽しみください。
https://alma-telescope.jp/mediatype/movie

第一回

アルマ望遠鏡運用10周年 惑星形成研究の歩み
「惑星は、どうやってできるの?」そんな謎に、アルマ望遠鏡が答えを出そうとしています。 https://youtu.be/InzAxokCjuk

第二回

アルマ望遠鏡運用10周年 生命の「種」 有機分子の探究
「地球の生命は、どこで生まれたの?」「地球以外にも、生き物が生まれる可能性はあるの?」
そんな謎に、アルマ望遠鏡が挑んでいます。
https://youtu.be/a0o4S2aqpHU

 

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