アルマ望遠鏡が捉えた惑星系形成の現場:惑星の外側で塵が集まり、次の惑星が生まれる様子
アルマ望遠鏡は、すでに形成された惑星の外側に、次なる惑星の材料となる塵が局所的に集まっている現場を捉えました。国立天文…
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国立天文台アルマ望遠鏡メールマガジン
ALMA Mail Magazine 2023年2月7日号
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今夜は「月齢16」。アルマ望遠鏡の話題をお届けします。
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Pick up!
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◆星のゆりかごを揺さぶる若い星からの産声
九州大学の大学院生 佐藤 亜紗子氏らの研究チームは、アルマ望遠鏡を使ってオリオン座の星団形成領域を観測し、若い星から噴き出す高速のガス流が同じ星団形成領域内の若い星たちに激しく衝突している様子を捉えることに成功しました。衝突によって星団形成領域のガスや塵(ちり)は激しく揺さぶられ、そこでの星の形成に影響を与えている可能性があります。若い星や星の材料が密集して存在する星団形成領域において、星が生まれてくる複雑な過程の理解に迫る重要な一歩と言える成果です。
https://alma-telescope.jp/news/press/omc-2-202302
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Topics
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◆1000 倍の解像度で見えた! 大質量の星を生み出す、磁場が支えるガスの流れ
アルマ望遠鏡の高い解像度によって、大質量の星が生まれる場所では、星に物質が供給される仕組みに磁場が重要な役割を果たしていることがわかりました。
星形成過程において、磁場がどのような役割を果たすかは、これまでも広く議論されているテーマです。
この磁場がどれほど強いのか、そして、磁場は星の材料物質を形成中の中心星まで運ぶことができるか、さらに、いつどこで重力が磁力の影響を上回るのかは、大きな謎でした。
台湾中央研究院のパトリック・コッホ氏を中心とする国際研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて、W51 e2およびe8と呼ばれる大質量星形成領域の磁場構造を、0.1秒角というこれまでにない高い解像度で捉えました。この領域の初期の解像度は3秒角だったので、30倍(面積に換算すると約1000倍)も解像度が向上しています。
これは、アルマ望遠鏡の優れた感度と解像度によって実現したもので、磁場の分布を1000倍も鮮明にし、500天文単位という小さな領域まで初めて可視化することに成功しました。
https://alma-telescope.jp/news/magnetic_stream
◆年を経た惑星工場にも十分な材料
「うみへび座TW星」を取り巻く原始惑星系円盤内のガスの量を、アルマ望遠鏡の観測データを用いた新たな手法で測定しました。天体の年齢が比較的高いことから、かなり少なくなっていると考えられていたガスの量が、予想外に多く存在していることが分かりました。惑星系の形成過程を解明するための重要な一歩です。
https://alma-telescope.jp/news/twhydrae-202301
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Events
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◆宇宙科学講演会~小惑星Kokubunji誕生8周年記念イベント
2月4日(土曜日)に開催した
上記イベントの講演内容をYoutubeにて動画配信されています。
https://www.youtube.com/watch?v=RyELtdpfJpA
【場所】
cocobunjiプラザ リオンホール
【講師】
津田雄一 (宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 教授)
阪本成一 (国立天文台 教授)
鈴木一義 (国立科学博物館 名誉研究員)
【内容】
小惑星探査機「はやぶさ2」が道筋をつけた惑星探査の最前線、アルマ望遠鏡が切り拓く最新の天文学、三人の講師によるスペシャルトークショーなど、心ときめく宇宙科学の魅力をお届けします。
◆「惑星探査50年の発見の歩み ボイジャー、はやぶさ2、系外惑星、・・・」
2022年11月19日、日本学士院総会議場にて行われた講演会の様子を
Youtubeにて動画配信しております。
https://www.youtube.com/watch?v=u7XjDyuaiDk
【講師】
Edward Stone(日本学士院客員/元ジェット推進研究所長)
藤本正樹(JAXA 宇宙科学研究所副所長)
深川美里(自然科学研究機構 国立天文台教授)
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Afterword
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JAXAの新しい基幹ロケット・H3ロケット1号機の打ち上げが迫っています。 現在運用中のH-IIAロケット試験機1号機が打ち上げられたのは2001年8月29日でしたから、22年ぶりに大型ロケットが新しくなります。
新しいものを作るには、非常に時間がかかります。 国立天文台のTMT(Thirty Meter Telescope、30メートル望遠鏡)も完成までにはまだまだ多くの時間が必要ですし、 アルマ望遠鏡も計画スタートから実際の建設開始までにおよそ20年かかっています。
ジャンルが違えど同じ宇宙仲間ということで、新しいロケットの無事の門出を願っています。
また、2023年度中にはJAXAのH-IIAロケットにてX線分光撮像衛星 XRISMが打ちあがる予定になっています。
こちらは2016年に打ち上げられたものの、すぐに不具合を起こし運用を停止することになってしまった「ひとみ」の代替機にあたります。
アルマ望遠鏡は電波を観測しますが、この衛星はX線を観測します。
電波とX線、まったく違うものを観測していると思われますが、実はこの2つは同じ電磁波です。
電磁波は波長によって名前が異なり、波長の長い方から短い方へ並べると、電波、赤外線、可視光、紫外線、X線、ガンマ線となります。
アルマ望遠鏡は、電波のなかでも波長が短く赤外線に近い「ミリ波・サブミリ波」を観測しています。
アルマ望遠鏡が観測するミリ波・サブミリ波は、特に宇宙に漂う温度の低いガスや塵を観測するのが得意ですが、X線観測衛星は逆にとても高温のガスを観測するのが得意です。
また、同じ天体を電波、赤外線、可視光、紫外線、X線という異なる波長で観測すると、まったく異なる姿を見ることができます。
国立天文台ウェブサイトに、これらのわかりやすい対比画像を掲載したページがありますので、ご確認ください。
多波長で観る宇宙|国立天文台(NAOJ)
このように一つの天体をいろいろな波長で見ることで、さらに多くの情報を得ることができます。
アルマ望遠鏡も、すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡などの可視光の望遠鏡の情報をもとに観測対象を定めることが良くありますし、協力して同じ天体を観測することもあります。
今後は、この新しいX線観測衛星と協力して観測することもあるかもしれません。
そうすることで何が発見されるのか、非常に楽しみです。
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