アルマ望遠鏡の新データ伝送システム、基本設計審査を通過
アルマ望遠鏡の新しいデータ伝送システムに関する基本設計審査が実施され、無事に審査を通過し、次の詳細設計フェーズへ進むこ…
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国立天文台アルマ望遠鏡メールマガジン
ALMA Mail Magazine 2024年4月25日号
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今夜は「月齢16」。アルマ望遠鏡の話題をお届けします。
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Pick up!
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◆赤ちゃん星の”くしゃみ”を捉えたか?
~アルマ望遠鏡が目撃したダイナミックな磁束放出~
九州大学および国立天文台の徳田一起らの研究チームは地球から約450光年と
星の誕生現場としては最も近いおうし座分子雲にある、MC 27という
分子雲コアに潜む原始星(赤ちゃん星)をアルマ望遠鏡で観測しました。その結果、
赤ちゃん星を取り巻く円盤から数天文単位の大きさを持つ
「棘(とげ)」のようなものが世界で初めて見つかりました。
これは当初予想していなかったものです。研究チームは理論研究との比較から、
「交換型不安定性」という現象に着目しました。この現象では、
円盤の縁に磁力が集中した際に重力中心の原始星から外側に向かう浮力が働き、
突発的な爆発現象のようにして短時間で磁束が放出されます。
この磁束の輸送機構は、これまで考えられていたものとは全く異なるものです。
短いタイミングで一気に磁力を外に追いやることから、
ほこりやウイルスを空気とともに一気に押し出す人間の「くしゃみ」にも似ています。
この不安定性が起こった瞬間に磁束が円盤の外側に飛び出してガスの空洞が作られます。
「棘(とげ)」は、空洞の周りのリング状のガスのうちの濃い部分が
観測されたものだと考えられ、磁束が飛び出す現場を捉えたものと解釈できます。
また、過去に観測されていた原始星から数1000天文単位に渡る
より大きい弓状のガスがこの棘と同様の特徴や空洞のように見えることから、
複数回「くしゃみ」をして磁束が円盤からはきだされた可能性も同時に浮かび上がりました。
このMC 27で見つかっていたような弓状ガス雲と似たような特徴は、
いろんな星の赤ちゃんで頻繁に見つかりつつあります。このくしゃみをする条件を
詳しく調べることにより、赤ちゃん星自身の成長過程やその周りにある
惑星の起源物質の理解が急速に進むと期待されます。
https://alma-telescope.jp/news/press/sneezes-202404
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Topics
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◆泉拓磨氏、令和6年度科学技術分野の文部科学大臣表彰
若手科学者賞をアルマ望遠鏡の研究で受賞
国立天文台でアルマ望遠鏡の運用にも携わる泉拓磨准教授が、
令和6年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞しました。
受賞に至った業績の題目は
「活動銀河核周辺物質の多彩な構造に関する観測的研究」です。
https://alma-telescope.jp/news/mextaward-202404
◆銀河の中の星工場―分子で見る繁忙期の製造ライン
国立天文台の原田ななせ助教、欧州南天天文台/合同アルマ観測所の
セルヒオ・マーチン博士、米国国立電波天文台のジェフ・マンガム博士を中心とした
国際研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて銀河系外の爆発的に星を生み出している
銀河NGC 253の中心部を観測し、100以上の分子種を検出しました。その解析により、
NGC 253中心部には星の進化の様々な段階にある領域が混在している様子を、
これまでになく詳細な形で描きました。また、得られた多数の分子種の分布図に
機械学習の手法を適用し、従来、星の進化段階を知るための
「指標」として使われてきた分子種に加え、いくつかの分子種が
指標として使えることを明らかにしました。
広い周波数範囲の観測時間を格段に短縮するアルマ2計画の後押しを受け、
今後、より多くの指標分子の同時観測により、爆発的に星を生み出す
メカニズムの理解が進むことが期待されます。
https://alma-telescope.jp/news/starfactory-202403
◆伊藤駐チリ日本国特命全権大使が、国立天文台三鷹キャンパスを視察
2024年3月5日、伊藤恭子駐チリ日本国特命全権大使が、
視察のため国立天文台三鷹キャンパスを訪問されました。
伊藤大使は、国立天文台の事業の概要について常田国立天文台長から説明を受けた後、
チリで運用中のアルマ望遠鏡における国立天文台のこれまでの貢献や
チリ大学との連携等について、活発な意見交換をされました。
その後は先端技術センターを訪れ、高感度センサーやアルマ望遠鏡の受信機といっ
た観測機器部品の開発現場を視察されました。最後に、4D2Uドームシアターを訪れ、
最新の観測データや理論研究に基づいたシミュレーションから制作された、
宇宙の美しい立体映像を体験されました。
https://alma-telescope.jp/news/ambassador-202403
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Events
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◆静岡科学館 る・く・る 科学茶房 「宇宙もグルグル!?星だって銀河だって回ってる!」
【日時】
5月6日(月・休) 13:30~14:45
【場所】
静岡科学館 る・く・る
エスパティオ9階 イベントホール
(静岡市駿河区南町14番25号エスパティオ)
https://www.rukuru.jp/guide/access.html
【定員・対象】
定員:120名
静岡科学館(054-284-6960)へ
お電話でお申し込みください(申込順)
対象:どなたでも(小学校中学年~大人におすすめ)
【参加費】
無料(別途入館料がかかります)
【講師】
水野範和さん(合同ALMA観測所 副所長・国立天文台 教授)
【内容】
る・く・る20周年企画展のテーマは「回る」。
私たちが住んでいる地球だって回っているし、銀河も渦を巻いています。
世界最大の電波望遠鏡ALMAで研究している水野先生に、
何で天体は回っているのか紹介してもらいます。
教科書にのっていないような『実はね…』という科学ネタをご紹介します。
気軽な雰囲気の中で研究者とお話してみませんか?
【詳細】
https://www.rukuru.jp/news_topics/news.php?id=102
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Afterword
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Pick up! で取り上げられた
◆赤ちゃん星の”くしゃみ”を捉えたか?
~アルマ望遠鏡が目撃したダイナミックな磁束放出~
赤ちゃん星(原始星)と周囲を取り巻いているガス円盤。
円盤を構成しているガスは部分的に電離(イオン化)していると
考えられていて、磁場とお互いに影響を及ぼしあいながら運動する
プラズマ(電磁流体)として扱われます。
この場合磁場をひものように考えることができ、
それらを束ねたものを磁束といいます。
今回の研究の観測では、円盤を貫いている磁束の一部が
一気に捨て去られたと考えられる特徴を初めて発見し
赤ちゃん星の「くしゃみ」の様なものと例えています。
一方、赤ちゃん星を取り巻くガス円盤と磁場がお互いに
影響を及ぼしあいながら円盤と垂直の方向に
速いガスの流れを生じるアウトフローと呼ばれる現象が
数多く観測されています。
こちらは 赤ちゃん星の「うぶ声」に例えられています。
アウトフローはガス円盤のガスが星の周りを回る勢いを
外に捨てる重要な役割をしていると考えられています。
回る勢いを奪われたガスに働く遠心力が弱くなりますので、
中心の赤ちゃん星に流れ込むことができる様になって、
星の進化が更に進んでいくことになります。
アルマ望遠鏡を用いた赤ちゃん星のアウトフローに関する
観測成果の記事を紹介させていただきます。
よろしければ以下のURLからご覧下さい。
2015.11.05
原始星から噴き出す間欠ジェット
https://alma-telescope.jp/news/mt-post_620
2017.06.13
産声から探る巨大赤ちゃん星の成長
https://alma-telescope.jp/news/press/orion-201706
2021.08.11
アルマ望遠鏡による超高速回転原始星ジェットの検出
https://alma-telescope.jp/news/jetrotation-202108
2021.02.09
赤ちゃん星が成長する仕組み:
ガス円盤から回転の勢いを抜き取るガス流
https://alma-telescope.jp/news/hh212-202102
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