134億年前の生まれたての銀河の知られざる性質
国立天文台のJorge Zavala特任助教が率いる国際チームは、134億光年先の生まれたての銀河の中で水素原子や酸素原子が放った輝線…
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国立天文台アルマ望遠鏡メールマガジン
ALMA Mail Magazine 2025年1月15日号
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今夜は「月齢16」。アルマ望遠鏡の話題をお届けします。
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Pick up!
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◆134億年前の生まれたての銀河の知られざる性質
国立天文台のJorge Zavala特任助教が率いる国際チームは、134億光年先の
生まれたての銀河の中で水素原子や酸素原子が放った輝線の検出に成功し、
銀河の原子輝線観測の最遠方記録を更新しました。そして、観測データの
詳しい解析から、これまでほとんど手がかりのなかった初期宇宙における
原始銀河の性質を明らかにしました。
https://alma-telescope.jp/news/press/primeval-202501
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Topics
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◆芝池諭人さん、惑星形成研究の最前線を語る ― 日・スイス国交樹立160周年記念事業
12月11日、スイス・ベルン大学のCenter for Space and Habitabilityが主催する講演会が、
日本とスイスの国交樹立160周年を記念した事業の一環としてベルン大学で開催されました。
国立天文台アルマプロジェクト研究員の芝池諭人さんが登壇し、
「惑星の秘密を解き明かす(Unveiling the Birth of Planets)」と題した講演を行いました。
https://alma-telescope.jp/news/japanswitzerland160-202501
◆アルマ望遠鏡の新データ伝送システム、基本設計審査を通過
アルマ望遠鏡の新しいデータ伝送システムに関する基本設計審査が実施され、
無事に審査を通過し、次の詳細設計フェーズへ進むことが認められました。
この新システムは、アルマ望遠鏡の性能を大幅に向上させる
広帯域感度アップグレード (WSU)の一環として開発されています。
WSUでは受信機をはじめとする多くのコンポーネントの性能向上が進められており、
このデータ伝送システムは、観測で受信した膨大な信号を高速で
相関器・分光計に伝送する重要な役割を果たします。
https://alma-telescope.jp/news/dtspdr-202412
◆活発な赤ちゃん星:B335で行われている宇宙における化学の実験
537光年先にある非常に若い星、B335は、明るさが変化する原始星です。
この原始星を観測したところ、星が生まれるときの化学物質の状態が
より詳しくわかってきました。圧倒的な感度と分解能を誇るアルマ望遠鏡を使うことで、
原始星が爆発的に増光している最中に複雑な有機分子(Complex Organic Molecules, COMs)
の振舞いを追跡することが可能になりました。宇宙で生命が生まれる上で重要な
環境の変化を実時間で直接観察することができました。
https://alma-telescope.jp/news/coms-202412
◆アルマ望遠鏡が捉えた惑星系形成の現場:惑星の外側で塵が集まり、次の惑星が生まれる様子
アルマ望遠鏡は、すでに形成された惑星の外側に、次なる惑星の材料となる塵が
局所的に集まっている現場を捉えました。国立天文台/総合研究大学院大学5年一貫制博士課程学生の
土井聖明氏(現マックスプランク天文学研究所ポストドクトラルフェロー)らの国際研究チームは、PDS 70という若い星の周りの原始惑星円盤を、アルマ望遠鏡を用いて波長3 mmでの高解像度観測を
行いました。この天体はすでに形成された二つの惑星を持つことが知られており、
アルマ望遠鏡による新たな観測は、惑星軌道の外側に塵が局所的に集積していることを
明らかにしました。この結果は、既に形成された惑星が次の惑星の材料を集め、
その形成を駆動している可能性を示唆しています。
本研究は太陽系のような複数の惑星からなる「惑星系」の形成過程の解明に貢献するものです。
https://alma-telescope.jp/news/domino-202412
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Afterword
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Pick up! で取り上げられた
◆134億年前の生まれたての銀河の知られざる性質
現在知られている中で最も遠方の銀河からの微弱な信号を捉えるために、
人間の目では全く何もないように見える空のある領域に対して、
アルマ望遠鏡の12mアンテナ40台以上を使用、
さらにジェームズウェブ宇宙望遠鏡(JWST)を使って長時間の観測を実行。
これまで全く届かなかったような非常に遠方の、初期宇宙の
生まれたての銀河の中で水素原子や酸素原子が放った輝線を捉えることに成功。
130億光年よりもさらに先の、現在知られている中で
最遠方の銀河から放たれた原子輝線の観測に成功した研究成果です。
宇宙は膨張していて、より遠くの宇宙ほどより速い速度で遠ざかって見えます。
遠ざかる救急車のサイレンの例で説明されることが多いのですが、
サイレン(音)同様に光も波の特徴があるため、遠ざかっていくものから
放出される場合、波長が引き伸ばされて観測されます(ドップラー効果)。
遠ざかっていく救急車の音がより低い音で聞こえることが
サイレンの波長が引き伸ばされて聞こえることに相当します。
アルマ望遠鏡は電波を観測する望遠鏡システムですが、
電波も私たちの目で見ることができる光(可視光)と同じ
電磁波ですが、可視光よりも波長が長い電磁波です。
とても速いスピードで遠ざかって見える遠方の銀河から放出されることで、
原子の放つ輝線の波長が引き伸ばされて電波望遠鏡で観測できる様になり、
宇宙が生まれて間もない頃の銀河の進化、元素の進化に迫る様々な観測成果が、
アルマ望遠鏡によって得られています。
アルマ望遠鏡による遠方銀河から放出される原子の輝線に関する
観測成果の記事を紹介させていただきます。
よろしければ以下のURLからご覧下さい。
2015.07.01
アルマ望遠鏡が初期銀河に漂う最初の「炭素のけむり」を発見
https://alma-telescope.jp/news/mt-post_601
2015.07.30
アルマ望遠鏡が初めて初期宇宙で銀河形成を目撃
https://alma-telescope.jp/news/mt-post_606
2017.03.08
アルマ望遠鏡、132億光年先の銀河に酸素と塵を発見
—最遠方記録を更新し、銀河誕生時代に迫る
https://alma-telescope.jp/news/mt-132
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