2014. 10. 10

【ALMA Mail Magazine】 2014年10月10日号 ~アルマ望遠鏡、アンテナを7kmの範囲に展開~

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▲▲▲ ALMA Mail Magazine 2014年10月10日号
Atacama Large Millimeter/submillimeter Array
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――― 国立天文台アルマ望遠鏡に関心をお持ちの皆さま ―――
毎月「月齢16」の夜にお届けしているアルマ望遠鏡メールマガジン。
国立天文台のフラッグシップ望遠鏡のひとつ、アルマ望遠鏡に関する
最新情報をお知らせします。
最新情報はアルマ望遠鏡のウェブサイト http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/
ならびにアルマ望遠鏡Twitterアカウント http://twitter.com/ALMA_Japan
をご覧ください。
INDEX
最新情報
  9月11日 アルマ望遠鏡、最高周波数帯バンド10での観測に成功
  9月17日 銀河衝突で作られる巨大ガス円盤-円盤銀河誕生の謎に電波で迫る
  9月29日 枝分かれした有機分子をアルマ望遠鏡が発見
PICK UP!
  9月24日 アルマ望遠鏡、アンテナを7kmの範囲に展開~解像度のさらなる向上へ一歩
イベント情報
 10月11日 栃木県子ども総合科学館 プラネタリウム講演会
 10月15日 CSJ化学フェスタ2014 公開講座「化学と宇宙」 講演会
 10月24日・25日 三鷹・星と宇宙の日2014 国立天文台三鷹地区特別公開
 10月24日~2015年2月1日 21_21 DESIGN SIGHT「活動のデザイン展」
 10月28日~2015年2月22日 国立科学博物館「ヒカリ展」
 11月1日~24日 コニカミノルタプラザ特別企画展
  「宇宙に挑む人類の”眼” アルマ望遠鏡プロジェクト展」
 11月3日 足立区生涯学習センター 教養講座
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 ■ 最新情報 ■
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◎ 9月11日 アルマ望遠鏡、最高周波数帯バンド10での観測に成功
アルマ望遠鏡が、ついに最高周波数帯での観測を達成しました。国立天文台が
中心となって開発した「バンド10」受信機を使って、電波観測としてはこれまで
で最も高い周波数での天王星の観測に成功したのです。アルマ望遠鏡は既に冷た
く暗い宇宙の観測にその威力をいかんなく発揮していますが、今回の観測成功は、
世界の天文学コミュニティにアルマ望遠鏡の全性能を開放するための重要な一歩
であり、アルマ望遠鏡プロジェクト全体から見ても非常に大きな意味を持つもの
です。
[最新情報] アルマ望遠鏡、最高周波数帯バンド10での観測に成功
http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/info/2014/0911post_561.html
◎ 9月17日 銀河衝突で作られる巨大ガス円盤-円盤銀河誕生の謎に電波で迫る
アルマ望遠鏡をはじめとする電波望遠鏡による37の衝突銀河の観測により、銀河
どうしが衝突した後に高い確率でガスの円盤構造を持つ銀河が作られることが初
めて確かめられました。我々が住む天の川銀河のような円盤銀河の起源に迫る、
重要な成果です。
国立天文台で研究を行う植田準子氏(日本学術振興会特別研究員)が率いる研究
グループは、衝突の最終段階にある37個の銀河における分子ガスの分布を、世界
中の電波望遠鏡の観測データを使って調査しました。分子ガスが放つ電波を検出
できた30個の衝突銀河のうち、24個の衝突銀河において、分子ガスが円盤状に回
転していることを突き止めました。しかもそのうちの半分は、銀河中心部の星の
集合体よりも大きく広がったガス円盤を持っていることもわかりました。ガス円
盤の中で将来的に多数の星が作られると、結果的にこれらの銀河は星とガスの円
盤を持つ円盤銀河に進化していくと考えられます。
[最新情報] 銀河衝突で作られる巨大ガス円盤-円盤銀河誕生の謎に電波で迫る
http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/info/2014/0917post_563.html
◎ 9月29日 枝分かれした有機分子をアルマ望遠鏡が発見
ドイツ・マックスプランク電波天文学研究所のアーノルド・ベローチェ氏が率い
る研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて星間空間に新たな有機分子を検出しまし
た。この分子はイソプロピルシアニド(i-C3H7CN)と呼ばれる分子で、既に星間
空間に大量に存在することが知られていた分子(プロピルシアニド)の異性体
(同じ数・同じ種類の原子からできているが構造が異なる分子)です。
プロピルシアニドとイソプロピルシアニドの大きな違いは、この分子の「背骨」
にあたる炭素原子の並び方です。プロピルシアニドでは炭素が一直線に並んでい
ますが、今回発見されたイソプロピルシアニドはこの「背骨」が枝分かれしてい
ます。今回の発見は、こうした「枝分かれした炭素の背骨」を持つ有機分子が宇
宙に豊富に存在していることを示すものとして注目されます。
[最新情報] 枝分かれした有機分子をアルマ望遠鏡が発見
http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/info/2014/0929post_564.html
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 ■ PICK UP! ■
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◎ 9月24日 アルマ望遠鏡、アンテナを7kmの範囲に展開~解像度のさらなる向上へ一歩
アルマ望遠鏡において、アンテナを差し渡し7kmの範囲に展開した干渉計試験に成
功しました。アルマ望遠鏡は、アンテナ群の中心から3本の「腕」を伸ばすように
アンテナを展開させますが、今回初めてその3本の腕にアンテナを置いた試験観測
が行われ、無事に成功しました。今回の試験観測ではまだ天体画像は取得されてい
ませんが、さらなる高解像度観測の実現に向けた大きな一歩です。
アルマ望遠鏡のような「電波干渉計」では、アンテナの間隔を離せば離すほど解像
度が向上します。アルマ望遠鏡は2011年から科学観測を行っていますが、その中で
使われているアンテナの展開範囲(基線長)は最大1.5kmに限られています。これ
は、アルマ望遠鏡が観測する電波(ミリ波・サブミリ波)では遠くに設置したアン
テナでとらえた信号どうしを組み合わせて画像にすることが難しく、装置や観測手
法がうまく機能することを確認・調整しながらアンテナ間隔を徐々に広げていく必
要があるためです。
今回、標高5000mの地で最大アンテナ展開範囲が初めて7kmに達しました。これを成し
遂げたことは、天文学的にも、また技術的にも、非常に大きな意義を持ちます。
[最新情報] アルマ望遠鏡、アンテナを7kmの範囲に展開~解像度のさらなる向上へ一歩
http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/info/2014/092411km_6000.html
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 ■ イベント情報 ■
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◎ 10月11日 栃木県子ども総合科学館 プラネタリウム講演会
「栃木から世界へ羽ばたけ!」
講演者:長谷川哲夫(国立天文台チリ観測所長・教授)
時間:15:00-16:00
場所:栃木県子ども総合科学館(栃木県宇都宮市)
[詳細] 栃木県子ども総合科学館
http://www.tsm.utsunomiya.tochigi.jp/index.php?key=muhuodjgb-221#_221
◎ 10月15日 CSJ化学フェスタ2014 公開講座「化学と宇宙」
「宇宙化学とアストロバイオロジー ~生命の起源は宇宙?~」
講演者:平松正顕(国立天文台チリ観測所 助教)他
時間:16:45-17:20(公開講座全体では 13:00-17:20)
場所:タワーホール船堀
申込:参加登録が必要(無料)
[詳細] CSJ化学フェスタ2014
http://www.csj.jp/festa/2014/program.html#PUB3
◎ 10月24日・25日 「三鷹・星と宇宙の日2014」
国立天文台三鷹地区特別公開
場所:国立天文台三鷹キャンパス(東京都 三鷹市)
内容:ALMA棟でのミニ講演会、ポスター展示など
[詳細] 三鷹・星と宇宙の日2014
http://www.nao.ac.jp/open-day/2014/
◎ 10月24日~2015年2月1日 21_21 DESIGN SIGHT「活動のデザイン展」
場所:21_21 DESIGN SIGHT(東京都港区)
内容:アルマ望遠鏡で取得したデータを音楽に変換した作品を展示
[詳細] 活動のデザイン展
http://www.2121designsight.jp/program/fab_mind/
◎ 10月28日~2015年2月22日 国立科学博物館「ヒカリ展」
場所:国立科学博物館(東京都台東区)
内容:アルマ望遠鏡アンテナ模型・受信機の展示など
[詳細] 特別展「ヒカリ展―光のふしぎ、未知の輝きに迫る!」
http://www.kahaku.go.jp/exhibitions/ueno/special/2014/hikari/index.html
◎ 11月1日~24日 コニカミノルタプラザ特別企画展
「宇宙に挑む人類の”眼” アルマ望遠鏡プロジェクト展」
場所:コニカミノルタプラザ(東京都新宿区)
内容:アルマ望遠鏡写真パネル、アンテナ模型、映像展示および講演会
[詳細] 「宇宙に挑む人類の”眼”アルマ望遠鏡プロジェクト展」
http://www.konicaminolta.jp/plaza/schedule/2014november/alma/index.html
◎ 11月3日 足立区生涯学習センター 教養講座
「新しい宇宙への扉 アルマ望遠鏡と国立天文台チリ観測所」
講演者:平松正顕(国立天文台チリ観測所 助教)他
時間:14:00-16:00
場所:足立区生涯学習センター(東京都足立区)
申込:参加申込が必要(無料)
[詳細] 足立区生涯学習センター
http://www.adachi-shogakucenter.net/system/public/600ef684.html
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 ■ あとがき ■
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8日の皆既月食、皆様ご覧になれたでしょうか? 雲に覆われてしまった地域も
あったようですが、テレビのニュースでも中継されるなどかなり話題になり
ました。国立天文台のウェブサイトにも多くの方が訪問され、一時はアクセス
が難しい状態になっていたようです。ご不便をおかけした方には大変申し訳
ありませんでした。
今回の月食は日本からはよく見える時間帯の現象でしたが、残念ながらチリ
からは見ることができませんでした。チリで観測できた月食としては2008年
2月のものがありますが、その時にアルマ望遠鏡のアンテナ1台で観測した月食
のようすがこちら。
http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/info/2008/0916post_21.html
可視光画像と電波画像を、時間を合わせてアニメーションで表示しています。
物体から放射される電波は、その物体の温度が高いほど強くなります。つまり、
電波の強度を測ることは電波を出す物体の温度を測ることになります。月食は
月が地球の影に入る現象ですので、その時の月の表面の温度は少し下がります。
この時に観測された電波画像を見ると、月食の進行に従って電波強度が下がって
いることが見て取れます。このように、電波による観測では可視光観測で得られ
ない情報を得ることができるのです。
「最新情報」「PICK UP!」でお知らせしたとおり、未踏の高周波数帯「バンド10」
での観測やアンテナ間隔を大きく広げた状態での観測に成功することで、アルマ
望遠鏡はまた一つ宇宙への「窓」を大きく開きました。もちろんこれは、驚く
ような新しい発見への第一歩に過ぎません。この「窓」から、光では読み取れない
どんな宇宙の姿が見えてくるのか。世界の研究者もその力に大いに期待しています。
新しい成果は随時ウェブサイトやこのメールマガジンでお知らせしていきますので、
皆様もぜひご期待ください。
■ご意見、ご感想はお問い合わせフォームからお寄せください。
 お問い合わせフォーム:http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/inquiry/
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国立天文台 チリ観測所 http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/
Copyright(C) 2014 Atacama Large Millimeter/submillimeter Array(ALMA), NAOJ.
All rights reserved.
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