このプレスリリースは、2015年6月9日に東京大学より主導発表されたものです。詳しくは、東京大学大学院理学系研究科のプレスリリース をご覧ください。
概要
2015年2月、アルマ望遠鏡がとらえた117億光年彼方のモンスター銀河「SDP.81」の画像が、世界同時公開されました。SDP.81は、その手前に偶然位置する距離34億光年の銀河の重力によって、その姿がリング状に拡大されています(重力レンズ効果)。人類が初めて経験する高い解像度と感度で取得されたその画像は世界中の研究者の注目を集めましたが、その複雑な観測結果を解釈することができていませんでした。そこで、東京大学理学系研究科の田村陽一助教と大栗真宗助教および国立天文台の研究グループは、SDP.81をもっとも精緻に再現できる重力レンズ効果モデルを世界に先がけて発表しました。この結果、重力レンズ効果によって拡大されたSDP.81の詳細な内部構造を解明しただけでなく、重力レンズ効果を引き起こしている手前の銀河に太陽質量の3億倍以上におよぶ超巨大ブラックホールが存在することを世界で初めて示しました。アルマ望遠鏡と重力レンズという天然の望遠鏡の組み合わせによって、じつに視力13,000が達成されたことになります。この結果は、モンスター銀河の形成過程や超巨大ブラックホールの成長メカニズムの解明につながると期待されます。
この研究成果は、Tamura et al. “High-resolution ALMA observations of SDP.81. I. The innermost mass profile of the lensing elliptical galaxy probed by 30 milli-arcsecond images”として、天文学専門誌「日本天文学会欧文研究報告」オンライン版に2015年6月9日付で掲載されます。