2019. 7. 19

【ALMAメールマガジン】アルマ望遠鏡、惑星誕生の現場をピンポイントで特定

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国立天文台アルマ望遠鏡メールマガジン
ALMA Mail Magazine 2019年7月19日号

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今夜は「月齢16」。アルマ望遠鏡の話題をお届けします。


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Pick up!
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◎アルマ望遠鏡、惑星誕生の現場をピンポイントで特定

国立天文台の塚越崇特任助教らの研究グループは、若い星うみへび座TW星を取り巻く塵とガスの円盤(原始惑星系円盤)を観測し、円盤内で惑星が作られつつある強い証拠を発見しました。円盤内に、これまで発見されていなかった小さな電波源が存在することを明らかにしたのです。研究グループは、この電波源が (1)すでに形成されつつある海王星サイズの惑星を取り巻く「周惑星円盤」、(2)円盤内で生まれたガスの渦に溜まった塵で今後惑星になりうる構造、のいずれかだと考えています。今回は、これまで行われてきたアルマ望遠鏡による観測に比べ、およそ3倍という非常に高い感度を達成しており、円盤内のより詳細な電波強度分布を描き出すことに成功しました。原始惑星系円盤内にこのような微小な電波源が見出されたのは、今回が初めてです。
https://alma-telescope.jp/news/press/twhya-201906


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Topics
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◎冷たい輝きを放つ天王星の環

アルマ望遠鏡と欧州南天天文台の超大型望遠鏡VLTによって撮影された最新の画像から、天王星の環の温度が初めて測定されました。天王星の環の温度はマイナス196℃で、液体窒素の沸点と同じです。この観測では、天王星の「イプシロン環」と呼ばれる最も密度の高い環が、太陽系のほかの惑星の環とは異なる性質を持っていることも明らかになりました。イプシロン環は、ゴルフボールサイズかそれより大きい岩で構成されており、小さな塵が見当たらないのです。今回の観測は、天王星の13本の環すべてが同じ源から来たのか、それぞれの環で異なるのかなど、環の構成を理解するための重要な手がかりとなりそうです。
https://alma-telescope.jp/news/press/uranus-201906


◎アルマ望遠鏡が初めて明らかにした、大質量原始星を取り巻くガス円盤の姿

山口大学の元木業人(もとぎかずひと)助教らの研究チームは、アルマ望遠鏡を用いて巨大原始星G353.273+0.641を観測しました。その結果、この巨大原始星の周囲のガス円盤の様子をこれまでになくはっきりとらえることに成功しました。また、ガス円盤の外側から内側に向かってガスが落下していることも明らかになりました。さらに、円盤に含まれるガスも、中心の原始星に流れ込みやすい状態になっていることが初めてわかりました。これらは、多くの謎に満ちていた大質量原始星の進化の過程を解き明かす、重要なステップといえます。
https://alma-telescope.jp/news/press/protostar-201907


◎若い星のまわりで見つかった「衛星を作る」周惑星円盤

天文学者たちのチームは、アルマ望遠鏡を用いて「周惑星円盤」の観測に初めて成功しました。周惑星円盤とは、若い恒星を取り巻く塵とガスの円盤(原始惑星系円盤)内で形成される惑星の周りの小さな円盤構造のことで、理論的な計算によって予言されてきました。今回観測された若い惑星系PDS 70は、地球から約370光年の位置にあります。アルマ望遠鏡による観測結果と欧州南天天文台VLTによる可視光赤外線観測の結果を合わせると、PDS70の周りにある2つの惑星のうち、少なくとも外側に見つかった惑星のまわりには、複数の衛星を生み出せるほどの質量を持つ塵円盤があることが明らかになりました。
https://alma-telescope.jp/news/pds70-201907


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Afterword
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2019年7月2日、南米の一部で皆既日食が見られました。アルマ望遠鏡のあるチリのアタカマ高地では、太陽の76%が月に隠される部分日食となりました。この部分日食の様子は、アルマ望遠鏡の日本製12mアンテナ1台を使って電波でも観測を行うことができました。

アルマ望遠鏡が見た部分日食:
https://alma-telescope.jp/news/eclipse-201907

この日食の前後2週間に渡って、世界中から約900名の方がアルマ望遠鏡の山麓施設(標高2,900m)を訪れました。そして今回は特別に、アルマ望遠鏡のある標高5,000mの山頂施設見学も許可されました。日本からも日食観察ツアーに参加された方々が足を運んでくださり、健康診断をパスした27名が山頂施設のアルマ望遠鏡アンテナ群を見学しました。山頂施設は、これまで一般公開されたことがなく、普段は安全教育を受けた業務関係者や報道関係者など一部の人しか立ち入ることができません。今回は、見学者の皆さんも全員酸素ボンベ着用で山頂施設に行き、天文学の最先端とそれを切り拓く現場の姿をご覧いただける貴重な機会になりました。今後、山頂施設の一般公開を行えるかどうかは全く白紙の状態ですが、現場の雰囲気を伝えられる広報活動を目指していろいろな取り組みを企画していきたいと考えています。


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