2021. 10. 28

【ALMAメールマガジン】アルマ望遠鏡 科学観測開始10周年

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国立天文台アルマ望遠鏡メールマガジン
ALMA Mail Magazine 2021年10月23日号
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今夜は「月齢16」。アルマ望遠鏡の話題をお届けします。
 
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Pick up!
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◆ アルマ望遠鏡 科学観測開始10周年

10年前の2011年9月30日、アルマ望遠鏡は16台のアンテナで初期科学観測を開始しました。同年10月3日には、試験観測で得られた触角銀河(アンテナ銀河)の画像とともに観測開始のプレスリリースを行い、新しい天文学が切り開かれていくことを広く皆様にお知らせしました。
科学観測開始10周年を記念して、2021年8月末からアルマ望遠鏡の66台のアンテナに名前をつけるキャンペーンを実施しました。天体の名前と、アルマ望遠鏡の立地地域で伝統的に使われてきたクンザ語の単語で皆様からの命名提案を募集し、インターネット投票で66の名前を選びました。採用された名前の一覧は、以下のウェブサイトをご覧ください。
https://alma-telescope.jp/news/10thanniversary-202110

 
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Topics
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◆ アルマ望遠鏡が描く双子の星の軌道運動

鹿児島大学の大学院生 市川貴教氏 (研究当時)、城戸未宇氏、高桑繁久教授らの研究チームは、若い双子の星(連星)おうし座XZ星系を3年間にわたって観測したアルマ望遠鏡のアーカイブデータを解析することにより、連星が互いの周りを回る軌道運動を検出することに成功しました。アルマ望遠鏡の豊富なアーカイブデータを有効活用して若い連星の運動を動画として示した、初めての例であるといえます。この結果は、複数年にわたるアルマ望遠鏡観測データを解析することで天体の様々な時間変化を調べられることを示しており、「アルマ望遠鏡によるアニメーション」を用いた新たな科学の開拓が期待できる成果です。
https://alma-telescope.jp/news/press/xztau-202110

 

◆ 宇宙初期に「ガス欠」に陥った大質量銀河を発見

ビッグバンから30億年の間に形成された初期の大質量銀河には、星を作るための材料である冷たい水素ガスが大量に含まれているはずです。しかし、アルマ望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡を用いて初期宇宙を観測した研究者たちは、星の材料を使い果たした奇妙な初期大質量銀河を6つも発見しました。短い時間で大量の星を作り、そして突然星を作るのをやめてしまった銀河では何が起きていたのか、謎は深まるばかりです。
https://alma-telescope.jp/news/quenchedgalaxy-202109

 

◆ 星形成領域は大型有機分子の宝

アミノ酸は、アミノ基(NH2)とカルボキシル基(COOH)を持つ分子化合物です。複数のアミノ酸のアミノ基とカルボキシル基が結合し、-NH-CO-の構造を持つものをペプチドと呼び、約50個以上のアミノ酸がペプチド結合した分子化合物をタンパク質と呼んでいます。ペプチドやタンパク質は、生命活動や生命現象においてなくてはならない生体高分子であることはよく知られています。現在までに240種ほどの分子が宇宙から検出されていますが、ペプチドに類似する分子はわずか4種しか見つかっていません。今回、アルマ望遠鏡を使って天の川銀河の中心付近にある巨大なガス雲「いて座B2」領域を観測した結果、これまでに宇宙で検出されたペプチドに似た分子としては最大のものとなる、プロピオン酸アミド(C2H5CONH2)が放つ電波が検出されました。。今回の観測結果から、オリオンKLなどの大規模な星形成領域においてもプロピオン酸アミドが存在する可能性があると予想され、今後のアルマ望遠鏡による観測が期待されます。
https://alma-telescope.jp/news/organicmolecule-202110

 
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Events
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◆ プラネタリウム上映「電波で探る宇宙〜アルマ望遠鏡10年の軌跡」

会場:平塚市博物館 プラネタリウム
日時:2021年10月3日(日) ~11月28日(日)
内容:アルマ望遠鏡が観測を始めてから今年で10周年。
   それを記念し、アルマ望遠鏡の軌跡や科学成果を紹介するとともに、電波で見た宇宙の姿を解説します。
   ナレーション:辻本あかり
   監修・出演:平松正顕(国立天文台天文情報センター)

来場にあたっては感染対策にご留意いただき、開催状況・上映スケジュールについてはウェブサイトをご参照ください。
https://hirahaku.jp/

 

◆ 国分寺市オンライン配信イベント「星空をめぐる旅」

開催方法:配信 YouTube
日時:2021年10月30日(土) 18時30分~19時45分(予定)
内容:おうちで過ごすことが増えた今、旅は憧憬の的です。
   今回は「宇宙」と「旅」をテーマに、子どもから大人までご家族で楽しめるオンラインイベントが開催されます。
   プログラム
   (1)講演「宇宙を見学しよう」 高木俊暢(日本宇宙フォーラム)
   (2)講演「チリの天文台と星空ツアー」 阪本成一(国立天文台アルマプロジェクト)
   (3) 質疑応答

申し込み方法等について詳細はこちらのウェブサイトをご参照ください
https://www.city.kokubunji.tokyo.jp/machi/1007398/1026734.html

 

◆ 総研大社会連携事業「オンライン講演会 おうちで天文・宇宙」

開催方法:Zoomウェビナー
日時:2021年11月7日(日) 14時~15時30分
内容:総研大では社会連携事業「オンライン講演会 おうちで天文・宇宙2021」を開催いたします。
   『X線観測で探る超大質量ブラックホールの進化』
   講師:上田 佳宏(京都大学理学研究科)   
   『電波望遠鏡で見るブラックホール』
   講師:永井 洋(国立天文台アルマプロジェクト、総研大天文科学専攻)

この他、11月14日、21日にも別のテーマでの講演が予定されています。申し込み方法等について詳細はこちらのウェブサイトをご参照ください
https://www.soken.ac.jp/event/7120/

 

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Afterword
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10年前の2011年9月30日、アルマ望遠鏡は16台のアンテナで初期科学観測を開始しました。その後、観測に使えるアンテナの数は徐々に増え、66台での観測も実現し、教科書を書き換えるような多くの素晴らしい観測成果が報告されています。このメールマガジンをお読みの方の中には、アルマ望遠鏡建設前から継続してご支援いただいている方、また観測が始まってから関心を寄せていただいている方など、様々な方がいらっしゃいます。多くの成果があげられたことは、皆様のご理解、ご支援の賜物です。ありがとうございます。

科学観測開始10周年を記念して、2021年8月末からアルマ望遠鏡の66台のアンテナに名前をつけるキャンペーンを実施しました。日本の皆さまからもたくさんの応募をいただき、最終投票には世界中からおよそ6000人が参加し、66の名前が決定しました。最終的に選ばれた名前の中には、「天の川」「むりかぶし」「へいけ(平家星)」「からすきぼし(唐鋤星)」「オロチ」と5つの日本語由来の名前も含まれています。これらは、日本が開発したアンテナにつけられる予定です。

アルマ望遠鏡は、これからも世界中の天文学者から寄せられる研究提案をもとにして、様々な謎に挑んでいきます。今後もアルマ望遠鏡にぜひご注目ください。

 

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